スカンジナビア料理に満足して、次は何かないかと探してみたらゲテモノを扱う博物館があることが分かった。日本のテレビでも紹介されたらしく、なかなか面白そう。しかも、場所も博物館から徒歩圏内。その名はDisgusting Food Museumで、入口だけ見ると洋服や雑貨でも売っていそうなお洒落な雰囲気を醸し出している。入るのに少し勇気がいったが、ドアを開けるなりすぐに男性スタッフが歓迎してくれた。どっやらゲテモノの試食もできるらしく、彼は吐いてもいいようにと紙袋をくれた。止まらない苦笑い。
博物館は広くはないものの、所狭しとゲテモノが並んでいる。特徴的なのは、単に珍しい食べ物だけでなく、事故を引き起こした食べ物や動物虐待の観点からみた食べ物なども取り扱っているところ。この博物館によると、豚は健康維持のため抗生物質をたくさん打たれているので非常に不健康らしい。安い豚肉には要注意。
展示エリアでは試食はないものの、一部のチーズは試臭(?)が出来る。どれも臭いは確かに強烈で、鼻に到達した瞬間に反射的に顔を背けてしまうほど。GAMLE OLES FARFARというデンマーク産のチーズの説明には「臭い足と腐敗した死体の臭い」と書かれていた。ちなみに、我が日本からは納豆が選ばれていて、Superfoodとして紹介されていた。
最後は試食コーナー。ご丁寧に店員がひとつずつ説明をしてくれる。が、それゆえに食べざるを得ない状況に自然と追い込まれるとも言える。いくつか食べた中でインパクトがあったのは、サイズも見た目もゴキブリと変わらないゲンゴロウ [Diving Beetle] 。完全に水分を飛ばしているので生っぽさはなく、その点ではスナック感覚で抵抗感なく食べられた。味は薬っぽいというか土っぽいというか、何とも形容しがたい。少なくとも食べられない味ではない。そして、食べたい味でもない。
もうひとつは念願だったシュールストレミング。魚を発酵させた伝統食で、世界で最も臭い食べ物として紹介されることが多い。が、小指の先くらいの量を食べてみたら味は至って普通。塩気が強く、確かに発酵した魚特有の臭いはあるが、何の問題もなく食べられた。むしろ、高塩分にも発酵食品にも生魚にも慣れている日本人で、これに強烈な嫌悪感を示す人はいないのではないだろうか。これにより、僕はオーバーリアクションで視聴率を稼ぐというテレビ業界の闇を暴いたことになる。
帰る前にもうひとりの店員と少し話をしたら、僕の前にも日本人がいたらしく驚いていた。確かにマルメーで頻繁に日本人とコミュニケーションを取る機会はそうないだろう。彼は日本食に詳しく、納豆が大好きだと言っていた。この斬新な博物館を他の国でも展開したいらしく、自分も完全同意だと握手をしてお別れした。
外はもう日も落ちかけ、コペンハーゲンに戻った時にはあたりは真っ暗だった。ここから夕飯を探すのも面倒かつ寒いので、駅のブュッフェスタイルのアジアご飯屋でテイクアウトをした。ゲテモノを食べた後のビールは格別で、博物館もよかったし、マルメーに行ったことは結果として大成功だった。こういうことがあるから、知らない場所を訪れるのはやめられない。