パーティトレインでベルギーへ



ついに Tomorrowland 当日。パーティトレインが出るアムステルダム中央駅へ向かうと、派手な衣装を着た案内スタッフと、パーティアニマルがそこら中にいた。
案内に従ってプラットフォームへ向かうと、間もなく渋いファンファーレとともにパーティトレインが入ってきた。車体に刻まれた「Live Today, Love Tomorrow, Unite Forever」の文字がかっこいい。

ドアが開き、ドキドキしながら車内へ入る。車内は大音量でテクノが流れ、めいめい自由に席に座っている。ソロ参加もそこそこいて、肩身の狭さで押しつぶされるような陽キャ感は全くなかった。
空いている席を探し、同じくひとりで参加していた男性の隣へ。話してみると、彼はスペインから来ていて、僕と同じくTomorrowland初参戦らしい。
パーティトレインは、すべての車両がクラブになっているわけではない。DJブースがあるクラブ車両がひとつだけあり、基本的には車両ごとに順番でそこへ踊りに行く仕組みだ。
アナウンスでは自由に車内を移動して構わないと言っていたが、実際そこまでアクティブに動き回る人はほとんどいない。みんな普通に座って自分たちの番を待っている。
そして、ようやく自分たちの順番がやってきた。クラブ車両へ入ってみると、中は一気に別世界。
扇風機から大量の霧が噴射され、車内はほとんど周りが見えない。ほとんどミストサウナで、機材が心配になるレベル。
当然ながら一車両しかないので、DJブースを除けば入れるのはせいぜい50人くらいだろう。音楽を本気で楽しむというより、「電車がクラブになっている」という非日常を体験するイベントに近い。
しかも流れてくるのは、David Guettaの「Bad」など往年のEDMヒット曲が中心。自分は懐かしくて楽しいのだが、果たして今の若者は楽しいのか。それとも、そもそも クラブ人口が高齢化しているので問題ないのか。
ともあれ、最大の懸念だった「ソロ参加者はパーティトレインを乗り切れるのか?」という問題は、拍子抜けするほど簡単にクリアできた。
考えてみれば、このあと3日間ずっとテクノ漬けになる。会場に着く前の電車から全力投球するほど、みんな無謀ではない。
アントワープ駅がクラブに変貌!?

昨日に引き続きアントワープに着いたら、友人Oと友人Kと合流。非正規ルートでチケットを購入した友人Kは、現地での手続きがうまくいかなかったらしく、既にだいぶ疲れていた。
一方、アントワープ中央駅はすでにフェスティバルモード。大聖堂のような豪華な駅構内をバックに、ズンズンと規則的な低音が響く。ベルギーの新旧の歴史を真正面からぶつけたような構図 がかっこよく、昨日見た静かな駅とはまるで別の場所に見えた。
ここから会場までは、ローカル線で南にあるBoom駅へ向かう。電光掲示板を見ると、行き先欄に堂々と Tomorrowland と書かれていて、ほぼ専用列車のような扱いだった。
スーツケースを引きずり、灼熱のキャンプ場へ


ローカル線に揺られること約30分、Boom駅に到着。駅を出ると、まず襲ってきたのが強烈な日差し。湿度は低いものの、立っているだけでじわじわ汗が滲んでくる。
ここからは順番にシャトルバスへ乗り込み、会場方面へ向かう。バスに揺られること20分。ようやく Tomorrowland に到着したと思いきや、現実はそんなに甘くなかった。
バスを降りても、入口はまだ遥か先。スーツケースを木製の通路にゴロゴロ擦らせながら、ひたすら人の流れについて歩いていく。



さらに20分ほど歩き、ようやく入口に着いたころには完全に汗だく。列の前にいたインド人グループと記念撮影して、入口のチェックを済ませたら今度は DreamVille(キャンプサイト)を目指して再び歩き始める。
進むにつれて未舗装の道も増え、スーツケースの抵抗がどんどん大きくなる。昨日ドイツから運んでもらったテントもあるので、もはやフェスというより荷物運搬訓練だ。
ようやくキャンプサイトに着くと、入口に近い場所はすでに埋まっていた。自分たちが確保できたのは中ほどにあるイエローエリア。さらに奥にはパープルエリアがあるが、ここはもう辺境の開拓地だろう。


場所を確保したら、息をつく間もなくテント設営開始。そもそも自分はテントなんてまともに組み立てたことがなかったが、やってみると意外と簡単だった(基本、友人OとKが対応)。
どうにか寝床が完成したら、まずは水分補給。DreamVille には飲用できる水道が用意されていて、自由に水を飲めるのがありがたい。
それにしても暑い。湿度が低いのだけが救いだが、駅からバス、徒歩、荷物運び、テント設営と続いた身体にはかなり堪える。Tomorrowland、思った以上にハードかもしれない…。
前夜祭、まずは露店で腹ごしらえ

テントの設営も終わり、ようやく準備完了。お腹も減ってきたので、食事を兼ねてDreamVille内のメイン会場へ向かうことにした。
この日は本番の前日で、キャンプサイトの DreamVille で前夜祭が開かれる。会場前にはずらりと露店が並び、何を食べるか迷うくらい選択肢が多い。
ただし、問題は値段。1プレートの料理でほとんどが3,000円弱、ビールまで付ければ4,000円は余裕で超えてくる。
しかも会場ではユーロではなく、Pearl という独自通貨で支払う仕組み になっている。ざっくり1Pearl=1.9€=380円くらいなのだが、7Pearlが2,800円とは直感的に理解できない。金銭感覚を麻痺させる、すごいシステムと言えなくもない。
唯一の救いは、料理そのものがちゃんとしていること。素材も味もしっかりしていて、日本のイベント会場でたまに出くわすしょぼい料理でなくてよかった。
午後10時の夕暮れ、Tomorrowland前夜祭


夕方になり、いよいよ前夜祭(The Gathering)が始まった。この日のラインナップで強いて見たかったのは Amber Broos くらいだったので、彼女のセットだけは前方まで行ってみることにした。
会場はいい意味で一体感がまるでない。踊る人もいれば、仲間と話している人もいて、みんな好き勝手に楽しんでいる。このユルい空気がなんとも心地いい。

メイン会場の雰囲気をひと通り楽しんだら、今度は DreamVille 寄りにあるステージへ移動。こちらには小さなDJブースがあり、腰を落ち着けて音楽を聴くにはちょうどいい。
友人Kとビールを飲みながら、Bangers & Mash をつまんでまったり過ごす。夜になると気温もぐっと下がってきて、夏を忘れそうなくらい涼しい(ちなみに午後10時でようやく日が落ち始める)。



前夜祭が終わり、テントへ戻る途中でオランダ人カップルに声をかけられた。男性はかなり饒舌で、「僕たちは毎週のように Tomorrowland のヘッドライナーを見られるんだ」と話しながら、こちらが明日から何を見たいのかをやたらと聞いてきた。
最初はただ自慢なのかと思ったが、どうやらそうではなさそう。わざわざ遠くから来た自分たちに、せっかくの機会だから思い切り楽しんで欲しいという熱い思いだった。
一方、隣にいた彼女は完全に酔っ払っていて、何を言っているのかほとんど分からない。男性の情熱に感心したものの、冷静に考えれば 単に酔っ払いカップルに絡まれただけだった可能性も高い。
疲労困憊なのに眠れない極寒テント生活
テントに戻ったら、あとは寝るだけ。
Tomorrowland には木から水が出る無料シャワーもあるのだが、夜はさすがに寒すぎて、とても浴びる気にはなれなかった。仕方ないので、この日は体を拭くだけで終了。
ちなみに夜の DreamVille はかなり暗く、テント生活をするならヘッドライトは必須。寝袋のセットや着替えが、ライトなしでは相当難しい。
そして最大の誤算だったのが、明け方の冷え込み。昼間は汗だくになるほど暑かったのに、夜中から一気に気温が下がり、夏用の寝袋ではまったく足りない。
結果、死ぬほど疲れた一日だったのに、まともに眠れたのは4時間程度。Tomorrowland 本番を前にして、早くもキャンプ生活の洗礼を受けることになってしまった…。