シルクロード / Silkroad Part.4 (北院門)

路地裏 [by D5100]

中秋節初日の西安は、降ったり止んだりの煮え切らない雨。小雨なので出歩けないことはないが、雨の日特有の憂鬱は、遠出をしようという僕の気力をすっかり殺いでしまった。何より、今日は明日の敦煌行きの航空券を手配しなければならない。僕は不安定なホテルの回線と戦いながら、格安チケットを検索した。が、予想通りこの時期は値上がりしていてどれも2万円超え。金で買える利便性に安堵する反面、寝台列車で人生を見つめ直したかった僕は、中国の中秋節を少しだけ恨んだ。

悔恨の航空券を買った後は、ぐずついた空の下、当てもなく近場を散策することにした。まずは鐘楼 [Bell Tower] を挟んで向かいへ。すると、そこに人の流れが出来ていることに気づいた。流浪の旅人はしばらく中国人の流れに流され、鐘楼 [Drum Tower] の前で所狭しと並んでいる屋台を見つけた。客引きの怒号のような叫びが響き渡る活気に満ちた屋台街。予定もないので、ここでゆっくり西安の人々のスナップを撮ることに決めた。驚いたのは、この屋台街が初日に迷い込んだ西羊市に繋がっていたこと。以下は何度も通りを練り歩いて撮った一眼レフの秀作(?)の数々。時に写真は言葉より雄弁に語る。

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歩けば当然お腹が減るし、周りには中国人と食べ物しか存在しない。僕は気の向くままに買い食いをして、いたずらに体重を蓄積していった。以下は、食べた西安フードの寸評。西安はシルクロードの出発地点だけあって、イスラム文化の影響が羊料理という形で現れていた。僕の見たところ、ここでは豚肉を扱っている料理は確認できなかった。

ベールの女性が作っていた牛肉バーガー。牛肉の脂身はほとんどなく、パンは粉っぽかった。割とお腹に貯まる。おいしかった。

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胡麻ソースとラー油をかけた冷やしうどん。よく混ぜて食べるのがポイント。シンプルだが濃厚な味は、毎日食べても飽きなさそう。これも涼皮に含まれるのかは不明。

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ミニ涼皮。作り置きのため、やや乾燥していたのが残念だった。これを食べていたら、中国人家族に茶化すように話しかけられた。当然、何のことかさっぱり分からなかった。

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羊の串をカップに入れてくれたもの。1串10元なのでやや割高。ここの人たちにとって、羊は少し贅沢料理なのかもしれない。日本における牛肉。味はスパイスと羊肉の息がぴったり合っていて、あまり羊肉好きでない僕がお代わりするほど。ただ脂身だけの部分は少し臭いがきつく、食べられなかった。

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食後のデザート。日本で言うところのおはぎ。味は可もなく不可もなく。


鼓楼 [by D5100]
鼓楼の太鼓 [by D5100]
鐘楼 [by D5100]
鐘楼 [by D5100]

歩き疲れてお腹が一杯になる頃には、雨は完全に止んでいた。せっかくなので、僕は目の前にある鼓楼 [Drum Tower] に上ってみることにした。チケットは鐘楼 [Bell Tower]と合わせて50元。高みから見る西安市内に特筆するような特徴はなかった。鼓楼に上って一応の満足を得た僕は、くたびれたので夜までホテルで休憩することに。帰り際、ぽつりぽつりとまた雨が降ってきた。


鐘楼 [by D5100]
鐘楼 [by D5100]
西安の夜景 [by D5100]

西安最後の夜は、鐘楼から夜景を撮ることに決めていた。僕は大して空腹でもないのに、ホテル前の露店で買った西安風のハンバーガーをほおばりながら移動。細長い肉は豚肉だった。ホテルから徒歩1分の観光地である鐘楼は、ライトアップされて昼にはない華やかさを放っていた。ここにいると、ホテルを探してこの辺りを何度も往復した初日の苦労が、優しい香気をまとって蘇ってくる。夜景の背景はもちろん、ホテルの場所を教えてくれた鐘楼飯店。満足いく写真が撮れると短い西安の滞在に寂しさを覚え、もう一日滞在したい衝動に駆られた。しかし、旅の感傷はその土地に置いていかねばならない。あと数回、僕はこの旅で同じような思いを経験することになるのだろう。

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