ペニンシュラ香港で優雅な午後




アフタヌーンティーの本場といえばもちろんイギリス。だが、香港でそれを広めたのは他でもない、これから訪れる ペニンシュラ香港 らしい。さっきまで白い牢獄にいた身としては、急なランクアップにやや戸惑う。
襟を正して中に入ると、天井は高く、柱は堂々。すさまじい高級感の重圧を受け止めきれない。それでも気持ちを切り替え、席へと向かうとすでにみんなが待っていた。
まずは紅茶を注文し、前菜のコロッケでウォーミングアップ。しばし談笑していると、ついにアフタヌーンティーの主役である3段トレイのお出まし。
1段目は王道のスコーン、2段目は名物のキューカンバーサンド、そして3段目はケーキ。見た目以上にボリューム満点で、全部食べきったら今日一日のカロリーを余裕で突破する。
2階から流れる生演奏をBGMに、紅茶とスイーツを味わう90分。まさに非日常の贅沢だ。
これで15,000円なら、体験としては大いにアリだと思う。スコーンを無心にほおばると、牢獄の記憶は一瞬で(一時的に)吹き飛んだ。
真のメインは香港ガールズとの再会!

いくらアフタヌーンティーが贅沢でも、今日の真のメインはここから。なんと、モロッコで出会った香港ガールズと再会ディナー をする。サハラ砂漠で香港か日本で会おうと社交辞令のように話していたことが、まさかの現実になった。
集合場所は、尖沙咀から電車で20分ほどの 茎灣西。ベッドタウンのような駅で、出口が多くて迷子になってしまった。
どうにか時間ちょうどに彼女たちと合流。モロッコから2ヶ月しか経っていないので、彼女たちとの再会は至って自然だった。
言語が飛び交う異種格闘ディナー







やって来たのは、広東料理の 楚燃記 というお店。周囲には巨大な市場があり、街全体が活気に満ちている。
そんな喧騒を抜けて2階へ。席につくと軽く自己紹介を交わし、早速オーダー開始した。
食事の前に始まったのは、香港式の 食器洗いの儀式。お茶を使って自分たちの器を洗うという独特の習慣に、日本チームは興味津々。ついにはその様子をスマホで撮影し始め、シュールなショーになっていた。
メニューは酢豚やチャーハンをはじめ、うまく説明はできないが魅力的な広東料理がずらり。次々に運ばれてくる料理でテーブルはあっという間に満杯になった。気づけば合計8品。
「ちょっと頼みすぎた?」と笑っていたら、香港チームから「香港では7は縁起が悪いから、8品にしたの」と教えてもらった。おそらく日本の「4」と似たような感覚なのだろう。
料理はどれも抜群においしく、英語、広東語、日本語が入り混じるカオスな飲み会になった。僕にとっては、モロッコで出会った友人と、日本の仲間が一堂に会した特別な時間。一方で、自分が異種格闘技戦の主催者になったような不思議な気分だった。
旅がつなぐ縁


食後、どこかで一息つこうと SOYMart という豆乳系カフェへ。
正直お腹はパンパンだったが、メニューに 亀ゼリー入り豆乳 を発見してしまい、条件反射で注文してしまった。値段は500円程度で、味はパーフェクト。日本でもぜひ出店して欲しい。
香港ガールズとはここでお別れ。方向が逆なので茎灣西の駅で手を振って別れた。
1軒目では全額ごちそうになってしまったので、後からWhatsAppで丁寧にお礼を。聞けば、外国人をもてなしたのは今回が初めてだったそうで、その第一号になれたのは素直にうれしい。
考えてみれば、彼女たちとはモロッコのツアーで偶然一緒になっただけの間柄。それがこうして香港で食事を共にして、文化を交わし合えるとは、不思議な旅の縁としか言いようがない。
今度は彼女たちが富士山登山を考えているそうなので、次は僕たちが日本でもてなす番だ。
余談:現実はいつも重慶マンションからやってくる


一日を振り返って気分よく帰れるのは尖沙咀まで。重慶マンションに差し掛かると途端にテンションが失速する。
全然こないエレベーターに窓のない部屋。夢の世界から現実へ。シンデレラの中年逆バージョンだな…。