次はショッピングモールから程ないところにある、ハンブルク市庁舎に立ち寄った。さりげなくUNIQLOが隣接しているのに驚いたが、歴史の重みを一身に背負った市庁舎の壮大さには全てが霞んでみえる。どうやら海外からの来賓があるらしく、入口にはそこそこの警備が敷かれていた。中に入ると、巨大な円柱から花が咲くようにアーチ状の天井に繋がっていて、目を見張る美しさだった。そして、そこから中庭に出ると彫刻のような噴水があり、建物を背景に写真を撮るとまさにポストカード。
短時間の滞在に満足して外に出ると、ふと地面に周囲と違う小さな石畳があるのに気付いた。先輩に聞いてみると、これはホロコーストで命を落としたユダヤ人名前が刻まれているらしい。やはりドイツはどこに行ってもユダヤ人に対する罪と切り離せない。いや、自ら切り離さないと言うべきか。ふとした発見に我に返った僕は、この旅がダークツーリズムの一環だということを改めて思い出した。
市庁舎から少し南に行くと古ぼけた教会の塔が見える。聖ニコライ教会 [St.-Nikolai] という教会なのだが、実は廃墟。第二次世界大戦の後期、連合国のゴモラ作戦による空襲でハンブルクは甚大な被害に遭い、辛くも生き残ったこの尖塔が戦争の象徴として残っている。モダンなビルに囲まれた中に立ち尽くす教会は負の異彩を放っており、戦争遺構として存在感は絶大。時間があれば地下の博物館にも立ち寄りたかった。
ハンブルクには数多くの教会があるが、その中で一番有名なのが聖ミヒャエル教会 [St.Michaelis] 。プロテスタント系の教会で、屋根に取ってつけたような時計台は長らく街のシンボルになっているそう。内部はリューベックで見た教会と比べて、白を基調として金色の装飾が映えてずっと明るい印象。これが宗派によるのか時代によるのか、建築音痴の僕にはさっぱり分からない。
続いてリューベックでも見た寡婦向けの住宅街。Kramer Witwen Wohnungという名称で、日本語にすると「クラマー(というギルド)の寡婦向け住宅」とでもなるだろうか。この住宅は17世紀のもので、建物内部の見学ができるのだが、時間もないので瀟酒な通りを写真に収めて終了。
もう時間は午後1時を過ぎていたので、先輩おすすめのレストランに行くことにした。冷たい風にさらされながらエルベ川沿いを歩いて着いたのはBLOCKBRÄUSというお店。ここでのお目当てはシュバインハクセ [Schweinshaxe] という豚の脚のロースト肉だ。どでかい肉の塊にナイフを突き刺して出すワイルドさは日本人には絶対に思いつかない。若干炭水化物が足りない気はするが、とりあえずビールと肉の塊でチャージ完了。こういう食事をすると身も心もヨーロッパ人になった気がする。
(続く)