写真では何の不足もなく観光できているように見えるが、実際は足は棒になっているし何より死ぬほど寒い。気温は1桁台で、時に小雨に見舞われる。この時期のヨーロッパはどこも似たり寄ったりだが、今までのドイツの都市の中では一番寒い。
ということで、教会を観たら近くのカフェで食事をすることにした。本当なら先輩のおすすめのレストランに行く予定が、残念ながら休業中。幸いシナモンロールの腹持ちが良過ぎたので、カフェの軽食でちょうどよかった。入ったカフェはトルコ系のエキゾチックな雰囲気で、ここでグヤージュのような温かいスープを飲んだ。冬場のスープは神の食べ物。体が芯から温まる。
小雨が降り出す中、カフェを出た。次に行ったのはフュヒティングスホーフ [Füchtingshof] という寡婦向けの集合住宅。貿易で栄えたということはその分海難事故もあるわけで、発展の負の部分を補う社会福祉の取り組みと言えるだろう。男気溢れる荒くれ者の漁師が、未亡人の窮状を見かねて人肌脱いだと考えると胸が熱くなる。ちなみにここは中庭が有名らしいのだが、残念ながら入れず。
次は少し北に位置する聖ヤコビ教会 [St. Yakobi] に立ち寄った。奥にある漆黒のパイプオルガンが印象的で、楽器というより城のようなその存在感に圧倒された。他には海の死者を追悼するような場所もあり、リューベックという街が常に海の無慈悲さと対峙していたことが伺える。
旧市街の北端まで行ったら、来た道を戻って締めに聖ペトリ [St. Petri] に行くことにした。5€ほどで塔の一番上まで登ることができ、そこからリューベックを一望することができる。が、実際登ってみると、風が強くてとてものんびり眺めていられない。寒すぎるので急いで写真を撮ってすぐに退散。しかし、一瞬とはいえ貸切状態でリューベックの街を一望できたのは贅沢な時間だった。
最後は再びホルステン門。近くで見ると、色褪せた煉瓦といい重みに負けそうな傾きといい、リューベックを守り続けた歴戦の老将のような燻し銀の魅力がある。ちなみに門をくぐったのは午後3時過ぎ。4時間の滞在とは思えない、密度の濃い訪問になった。
(続く)