憂鬱な翌日。僕はドミトリーを去ることに決めた。ブラジルの友人には適当に理由をつけた。彼女は「今の時代、世界はそんなに広くない。また会えるわ」と言った。どうやら彼女は彼女でカッパドキアに旅立つらしい。しかし、世界が広くないとしたら、何故同じドミトリーに宿泊する2人の大人が出会えないのか。ロンドンで旅の計画を話し合った無駄な時間は、一体いつ良き思い出に昇華するのか。
次の宿は近場の3,000円くらいの安宿。イスタンブールは意外にホテルの値段が高く、見つけるのに苦労した。早速チェックインを済ませたら、寝転んでしばらく孤独を満喫。そして灰色の空が真っ黒になった頃、僕は重い腰をあげた。実はこの日、日本の友達に紹介してもらった人に会う予定なのだ。なんでもネイティブ並の日本語を話す韓国人と日本語を勉強中のフランス人らしい。さすがは東西の要所。イスタンブールには色々な人がいる。
小雨が降る中、僕はタクシムスクエア近くのフランス大使館前で2人と合流した。そして、挨拶もそぞろに一路トルコレストランへ。そして、おいしいラム肉を頬張りながら、日本語と英語とトルコ語で不思議なクロストーク。平気で3ヶ国語を操る彼女たちに世界の広さを感じた。トルコ料理を堪能した後は、夜景の見えるバーへ。街灯りで輝くトルコのアジア側は、昼間とは違って希望が灯されているようだった。韓国人の彼女が「海の向こうがアジアにまで繋がってるって考えると素敵じゃないですか?」と言った。ほろ酔いの僕はただただ頷いた。思えば唯一心が温まったイスタンブールの夜。