今日の残りの目的はヨーロッパ最大と言われるユダヤ博物館 [Jewish Museum]。ただ、時間はまだ十分にあるので、ベルリンの壁に描かれたとある絵を見に行くことにした。ベルリン西部にEast Side Galleryという、残存するベルリンの壁にアーティストがめいめい個性的な絵を描いている場所がある。
Ostbahnhof駅を降りて少し歩くと、主張の激しいド派手な絵が先の先まで続いているのが見えた。反体制や自由を表現しているものが多いようにみえる一方、原色を塗りたいだけのようなアバンギャルドなものもある。日本語や日本をモチーフにしたものがいくつもあったが、敗戦国同士のシンパシーでもあるのだろうか。
しばらく歩いて絵にも退屈し始めた頃、お目当てのブレジネフ(ソ連)とホーネッカー(東ドイツ)がキスしている絵を遂に見つけた。そこは記念写真を撮る人で溢れかえり、観光名所になっていた。
社会主義国家のトップにキスさせることに強烈な皮肉が潜んでいそうに見えるが、実はこの絵は実際のキスシーンを絵にしただけでオリジナリティはほぼない。ロシアでは、嘘か本当か友愛の証として男同士でもキスをすることがあるらしい(チークキスを少しずらせば口と考えれば別におかしくはない?)。ただし、性的マイノリティが注目される昨今、この絵の背景が理解されないと要らぬ議論を呼びそうな気もする。
端まで絵を見たら、シュプレー川を渡って近くのSchlesisches Tor駅まで。ここからユダヤ博物館を目指すのだが、駅に来た電車がまさかの超満員。まさかベルリンで東京の通勤ラッシュを体験すると思わなかった。酒を飲んでいる観光客のおかげで車内は酒臭く、ある意味東京よりタチが悪いかもしれない。
(続く)