遅れてやってきた夏休み、行き先はルワンダ

今年の夏休みはまさかの 11月。行き先は、悩みに悩んで ルワンダ に決めた。
ずっと心のどこかで、一度はアフリカに行ってみたい という思いがくすぶっていたし、何よりルワンダといえば、
──1990年代半ばに100万人以上の少数派民族が虐殺された過去を持つ国。
ゆるく続けてきた ダークツーリズムの集大成 として、どうしてもこの地に足を運びたかった。
ルワンダという国を初めて知ったのは、映画『ホテル・ルワンダ』だった。
当時の僕はまだ、人類の負の歴史に深い関心があったわけではなかったものの、少なくとも 虐殺とは単なる怒りや恨みだけでは起きない ことは理解していた。ルワンダで起きた虐殺の背景には、長年の民族対立、不景気による社会不安、そしてラジオによる巧妙な煽動 といった、複雑な要因が絡み合っていた。
そして何より恐ろしいのは、世界がこの出来事を傍観していた という事実。
当日は羽田からの レッドアイフライト(深夜便)。まずはカタールの ドーハで乗り継ぎ なのだが、
23:50発→23:40着
という時空を超えたフライトスケジュールに 絶望と興奮が止まらない。
総移動時間は まさかの18時間。一体、何本の映画を観れば到着するのだろうか…。
ドーハで乗り継ぎ





機内食を平らげ、映画を観ながらウトウトしていたら、気が付けばもうカタールのドーハに到着 していた。
しかし、問題はここから。周囲を見渡しても 乗り継ぎ方法がさっぱり分からない。
しばらく歩き回ったあと、近くにいた 筋骨隆々の空港職員に助けを求めた。すると、彼は無言でチケットをスキャンし、方向を指さしてくれた。
指示されたゲートはというと、空港の端の端のそのまた端。さすが中東のハブ空港、スケールが違う。
出発ゲートで飛行機を待つ人はまばらで、黒人系が9割、アジア系は1割ほど。残念ながら、日本人らしき人は一人も見当たらない…。
予期せぬウガンダ寄り道タイム

驚いたことに、機内はほぼ満席。ラッキーなことに前に誰もいない座席で、本を読みながらのんびり過ごしていた。
すると突然、早すぎる着陸態勢のアナウンス が流れてきた。
「まさか飛行機を間違えたのか?」と焦ってCAに確認すると、どうやらルワンダの前に ウガンダのエンテべ空港 に立ち寄るとのこと。そんな情報、チケットのどこにも書いていない…。
そして、着陸。驚くべきことに 9割以上の乗客 がここで降りていった。一気に静まり返った機内はまるでゴーストシップ。
どうやら満席だった理由は ルワンダではなくウガンダが目的地 だったらしい。
なんだか嬉しいような寂しいような複雑な気分。そして間もなく、清掃員が乗り込んできてお掃除タイムが始まった。
アフリカ初上陸、そしていきなり洗礼


エンテべから約1時間、ついにルワンダの首都 キガリ(Kigali)に到着。18時間フライトで 疲れは限界ギリギリ だったが、それを上回るほどの アフリカ初上陸の興奮 が押し寄せてきた。
「よし、ここから旅が始まるぞ!」と意気込んだその瞬間、なぜか僕の到着を祝うかのように雨が降り出した。よりによってこのタイミングで…。だが幸い、雨は20分ほどで小休止 してくれた。
キガリ空港はコンパクトで、両替所も携帯ショップもすぐ見つかる 親切設計だった。携帯ショップは、まるで宝くじ売り場のようなこぢんまりした店構え。中はなんと照明なしで、(いい意味で)店員のテンションもゼロ。
5分ほどでサクッと設定は完了し、無事にSIMカードは開通した。ちなみに、料金は 7ギガ+設定で500円くらい。コスパは最高。
徒歩で感じるルワンダ初体験




宿までは約7km。タクシーを使うのが普通だが、せっかくなら ルワンダの空気を全身で感じたい と思い、雨が降るまでは歩いてみることにした。
赤土の大地と、赤い屋根の家々。アフリカならではの色彩にテンションは上がりっぱなし で、立ち止まっては写真を撮るの繰り返し。
通りを歩いているのは、見渡す限り 現地のルワンダ人だけ。完全なるアウェーで、肩身の狭さがすごい。
初めてのアフリカで何かされるのではという緊張感に加え、すれ違う人々の視線が鋭く突き刺さる。
そんな中、学校帰りの子どもたちがニコニコしながら「ハロー!」と声をかけてくれた。その一言に張りつめていた気持ちが少しほぐれていった。
高地の涼しさと、ゆるやかに変わる街並み


赤道直下に位置しながらも、ルワンダの気候は思った以上にマイルド。高地にあるため、長時間歩いても意外と快適で助かった。
通りにはヤシの木がすっと並び、頭に荷物をのせて歩く女性たちの姿に、これぞアフリカといった異国情緒を感じる。
そして、周りには建築中の建物がいたるところに。ルワンダという国は、いままさに発展の過程にある のだと肌で実感した。
夕暮れのキガリで一息


1時間ほど歩いて、ようやく首都キガリの中心地に到着。ルワンダは 千の丘の国 と呼ばれるだけあって、なだらかな丘が連なり、高層ビルも少ないおかげで 街の眺めはどこか開放的で美しい。
ちょうど夕暮れ時だったので、休憩がてら丘の上から街並みをぼーっと眺めてみた。旅の疲れがじわっと癒されていく感覚。
一方、景色を見つめる僕に向けられる地元民の視線が相変わらず鋭い。
宿の正体は…まさかの民家?

ようやく宿の住所付近までたどり着いたものの、周囲には 戸建て住宅がずらり。どう見てもホテルっぽい建物は見当たらない。
仕方なく、恐る恐る住所と一致する家のインターホンを押してみた。すると、痩せた男性がにこやかに登場。
彼は自分を「キメニー」と紹介した。そして、予約していた宿の名前は Kimenyi Home。
──つまりこれは、キメニーさんの家なのでは…?
まさかの民泊。とりあえず、オーナーは物腰穏やかないい人そうなので安心した。
夕食難民、かろうじて回避


部屋でひと息ついた後、夕食を求めて外に出た。ところがこのエリア、政府関連の建物が多くて飲食店がほぼ皆無。
結局、宿の近くで見つけた 唯一のカフェが最後の希望 となった。メニューをみてもルワンダ感ゼロだったので、ファヒータとサラダをオーダー。異国に来て、まさかのメキシカンになった。
ちょっと残念ではあったが、この時間に 食事にありつけただけでもありがたい と考えよう。
油断大敵、ルワンダの撮影ルール


夕食を終えた後、日用品を買いに近くの コンビニ へ立ち寄ることにした。外観は飾り気ゼロで少し不安になったが、中に入ると石鹸や髭剃り、飲み物など 必要なものは一通り揃っていて一安心。
問題はその帰り道。夕暮れの街並みに気をよくして写真を撮っていたら、突然軍人に怒鳴られてしまった。どうやら 政府施設は撮影 だったらしい。
こういう空気感、共産主義系の国でもよくある話 だが、まさかルワンダで遭遇するとは…。ともあれ、何事もなくてよかった。
蚊帳の中で一日を振り返る

部屋に戻り、まずはシャワーでリフレッシュしようと思ったのだが、お湯の出が悪い。どれだけ工夫しても、まるで 栓を締め忘れた蛇口レベルの水量 しか出てこない。
仕方なく、お湯を体に塗りつけるようにしてどうにか汗を流した。とはいえ、シャワー以外は部屋も広くて居心地は上々。
天井に吊るされている蚊帳をほどいて、ベッドで今日のルワンダ初日をひとり振り返った。
すると、出てきた感想は意外にも 思った以上に「普通の国」だった というもの。正直、虐殺という強烈なイメージに引っ張られ、到着直後は警戒心MAXだったが、街の清潔さや整然とした雰囲気は、日本とどこか似ていた。
結局、物事の判断を歪ませるのは、知識不足による先入観なのかもしれない。信じるべきは、やはり自分の目と足。
ちなみに、初体験の蚊帳は 想像以上に風通しが悪くて30分でギブアップ。マラリアがなかなか撲滅されない理由が、少しだけ分かった気がした。