廃墟マンションはお化け屋敷









次に向かったのは、廃墟のマンション。これまでのスポットもそれなりに自由行動だったが、ここは入口を集合場所にして完全自由行動だった。
中に入ると、分厚い壁に阻まれて光はほとんど差し込まず、埃っぽい湿気がじっとり体にまとわりつく。(普通の感度では写真が全然撮れないので、ISOを2,000〜3,000に上げてようやく写るレベル)
どの部屋も大震災直後のように荒れ果てていて、暗さも相まってまるで本物のお化け屋敷を探検している気分になった。
基準オーバーの被爆量



薄暗いマンションを抜けて、次に案内されたのは廃墟になったホテルと文化会館。
試しにガイガーカウンターを取り出して放射線レベルを計測してみたら、まさかの1.58μSv。ガイドいわく、非汚染地域の基準は0.5μSv以下だから、軽く3倍はオーバーしている計算になる。
絶賛被曝中なのに、なぜかテンションが妙に上がってしまう不思議さ。人間は、非日常に足を踏み入れるといろんな感覚が麻痺するものらしい。
誰も乗ることがなかった観覧車




チェルノブイリの象徴といえば、このプリピャチに残る観覧車。赤茶色に錆びた鉄柱をぐるりと囲むように、黄色いゴンドラがきっちり並んでいる。
もともと楽しさのシンボルであるはずの観覧車が、1ミリも動かず野ざらしになっている姿は、何とも言えない切なさを醸し出していた。
さらに言うと、この遊園地は原発事故の直後がオープン予定日だったらしく、結局一度も人を迎えることなく廃墟になった。ガイドが「今日は全員無料で入れるよ」とジョークを飛ばして、みんなが苦笑いした。
廃墟に残るスーパーマーケットの記憶



遊園地のすぐそばに、がらんどうの巨大な廃墟があった。ガイドが「ここが何だったか分かる人?」とみんなに問いかけたが、誰も答えられない。
正解はスーパーマーケット。言われてみれば、青い看板がかろうじて案内板の名残をとどめているし、うっすら面影がないわけでもない。
日用品の宝庫だっただけに、きっと中のものは一切合切持ち去られてしまったのだろう。文明も物も、人が去ればあっという間に風化して、こうして無情な廃墟になるのだとしみじみ思った。
(続き)