翌日は小雨がぱらつく曇天。ひとりになった僕は、尖沙咀界隈を散策しながら見飽きない街を写真に収めた。近くの茶餐廳に入って500円程度の朝食を食べたら、昨日のことが夢に思えてきた。
昨日のディナーで旅の目的は達成したし、ついこの前に香港に来たばかりなので、正直もうやることがない。天気も思わしくなく、すっかり気が抜けた僕はビールとポテトチップスを買い込んでホテルに戻った。選んだのはクローネンブルグとLay’sのクラシック。ジャンクフードの組み合わせでこれを超えるものはいまだない。
ちなみに今回宿泊している重慶大厦は、牢獄のような手狭な部屋が密集しており、さながら現代版の九龍城。何故か建物内には中東系の人が多く、フレンドリー過ぎていきなり腕を掴まれ「SIM Card??」と聞かれることもしばしば。ただし、決して治安が悪いわけではないし、バックパックに慣れている人なら居心地も悪くない。
部屋でネットをしてたらいつの間にか夕方。さすがに窓もない部屋に終日いるのも気が滅入るので、前回行きそびれたビクトリアピークに行くことにした。雨にも負けず香港島に着いたら、まずは腹ごしらえ。もちろん又焼飯と満記甜品の鉄板のルーティーン。お腹は大満足。
気がつけば雨は止み、ピークの入り口に到着。この天気にも関わらず結構な人が並んでいた。トラムに乗って、エスカレーターで何フロアも上がるとようやく頂上。そして、久しぶりに香港の100万ドルの夜景が拝もうと展望エリアの扉を開けると、そこには衝撃の光景。
霧で何も見えない。
更に頭を押さえていないと帽子が吹き飛ぶほどに風が強い。稀にビルの灯りがぼうっと顔を出すが、すぐに白いもやに覆われてしまう。当然持ってきた一眼もほとんど使えず、せめて思い出でもとスマホで自撮りを連発。何十回も香港に来ているにも関わらず、結局満足行くピークの夜景は一度も撮れていない。
徒労に終わった帰りは、気を取り直して人気のないオフィス街を撮影。どんよりした空模様と無機質なビル群が織りなすコントラストが別世界を思わせる。夜景は残念だったが、思わぬところで逆の目が出た。100万ドルの夜景はまた次回。「きっと香港はまた僕に来て欲しいに違いない」と前向きに考えることにする。