まさかの香港再訪。実は友人からミシュラン三つ星レストランの予約が取れたと聞いて、高級中華を食べるためだけに香港に集まることになった。しかも、一緒に過ごせるのは僕が到着する1日のみ。こんなタイトでエキサイティングな旅行が他にあるだろうか。
待ち合わせは、今回の宿泊先でもある悪名高き重慶飯店。中東系の人々でごった返すビルの中で久々に僕たち3人は再会した。もうちょっと新鮮な感動があるかと思いきや、意外や渋谷で待ち合わせるのとなんら変わりはなかった。世界はどんどん縮んでいく。
集まってやることは当然食事。友人お勧めの飲茶のお店に入って、ビールを片手に手当たり次第注文した。久しぶりに腸粉やら鳥の足やら香港名物を堪能したら、体が香港に馴染んでいくのを感じた。舌の記憶の偉大さを実感。
満腹になったらフェリーで香港島へ移動。蘭桂坊方面に足を運んだら、メインの坂道で「JAPAN FESTIVAL」なるものが行われていた。香港の欧米人エリアで日本のイベントが開催されているという愛すべき混沌。そして、人が多すぎて何も見る気が起きない。
すっかり日も暮れ、お目当ての時間がやってきた。僕たちは不安と恍惚を覚えながら噂の三つ星中華、龍景軒へ。実は3ヶ月前でないと予約ができない人気店らしいのだが、今回謎のツテを使って予約が取れたとのこと。そのカラクリは不明だが、友人が入店の時に「William」と名乗って入ったことと無関係ではないだろう。
緊張の面持ちの僕たちは、店員の「How are you today?」を完全無視して着席。どんな料理があるのかと早速メニューを見ると、さすがに値段のレベルが違う。ありきたりな一品料理でも3,000円以上するし、ワインに至っては最高150万円という車が買える価格。あまりのセレブ度合いに怯んだ僕たちは、コースをやめてアラカルトにした。ワインは一番お手頃な北京産を選んだが、それでもボトルで15,000円する。
値段相応の味かと言われたら答えに窮するが、どの品も美味しいことに間違いはない。デザートも堪能して、腹五分目でお会計をしたら合計45,000円だった。コースなら50,000円以上は飛んでいるので、鉄壁の防御だったと言える。ただし、防御する必要があったのかは定かではない。
無事にメインイベントを終えた後は、蘭桂坊の坂を上ってテラスのあるバーで乾杯。永遠に途切れない人の群れを眺めながら、僕たちはたった1日の香港旅行を振り返った。料理を食べるためだけに外国に集合するなんて、ある意味これ以上贅沢な過ごし方は他にないだろう。「次はどこの国にしよう?」というのが僕たち3人の結論だったのは言うまでもない。