美しい朝焼けに別れを告げ、旅もいよいよ終盤。そして、すんなりいかないのが旅の醍醐味。帰りのバスでシンガポールに入国して手続きをして戻ったら、何故かバスがどこにもいない。場所は違えようがないし、ろくにチェックもせず出発したいに間違いない。市内まではまだまだ距離はあるし、焦りと苛立ちが抑えられない。ここに来る前に友人から「前にお客さんが置いていかれる事件があったから気を付けてね」と忠告を受けていたが、まさか自分の身に降りかかるとは。一方で、こんなトラブルを楽しもうとしているもうひとりの自分がいることも否定はできない。不思議な旅の心理。単なる強がりとも言える。
幸い同じ会社のバスがすぐ後に来たのでそれに乗ってどうにか市内にたどり着けた。そして、ホテルの最寄り駅に移動して、駅前のファストフード店で食事。空腹と精神的ストレスから解放されたこともあって、ありきたりのワンタンミーがご馳走に思えた。
ホテルは初日より少しグレードを上げたため、受付の対応は丁寧だし部屋も清潔。2,000円程度でこんなに違うならケチらなければよかった。安物買いの銭失いを地で行くスタイル。後悔はしても反省はしない。
もう取り立てて目的はないので、頼まれていたBengawan Soloという店のクッキーを買いに行くことに。友人の話を聞いて以来、街を歩いていると通りに並ぶ一軒家が気になって仕方がない。一体どういう仕事をしている人たちなのだろう。
クッキーを買った帰りは、再び初日に歩いたカトンを散策。狙った訳ではないのだが、この日のホテルはカトンのすぐそばだった。
ホテルから駅を挟んで反対側のゲイランには、怪しげなナイトマーケットがあるらしい。しかし、ろくに調べもせず夜になってゲイラン界隈を歩いてみたものの、何も見つからない。やむなくタクシーを捕まえてナイトマーケットに向かってもらったら、降ろされたのは何故かどこにでもあるフードコート。果たしてここがナイトマーケットなのか。答えは明らかにノーだが、もうこれ以上移動するのも面倒なのでここで食事を済ませることにした。ゲイランのナイトマーケットよ、永遠なれ。
あっという間に最終日。早朝の空港で肉骨茶を食べてシンガポールとはお別れ。正味5日間という短い期間だったのでシンガポールだけにしようと思ったが、マレーシアを挟んで正解だった。バスのトラブルも終わってしまえばいい思い出。友人との再会も果たせたし、密度の濃い旅になった。心残りと言えば、ディズニーランドのアンチテーゼである「ハウパーヴィラ」に行けなかったこと。人生は取捨選択。行かなかったことにはきっと理由がある。