旧市街の終わりに上り坂が見えた。案内の標識を見ると「Ljubljana Castle」の文字。次なる観光スポットを労せず発見できてひとりほくそ笑んだ。リュブリャナ城までの道のりは、軽い山登り。じっと寒さを耐え忍ぶ木々の合間を縫って見える、リュブリャナの景観が美しかった。さて、お目当のリュブリャナ城はというと、想像していた荘厳さはなく、人目を避けるかような地味な石造りだった。勝手にプラハ城を想像していたので、落胆がなかったと言えば嘘になる。
手短に城内の観賞を済ませ、同じ道を歩いて下山。城よりも自然を楽しみながらの山道の方がずっと楽しい。途中、カメラを持った日本人2人組とすれ違った。お互い会話はせずとも、驚きの目線が交錯する。それくらい、この時期の東欧にはアジア人がいない。
再び旧市街。男のひとり旅には無用だが、お洒落なカフェや雑貨屋が行き交う人々を無言で誘惑している。看板、洋服、そして停めてある自転車まで、街を彩る装飾品になっていた。
通りを外れると、生鮮食品を売る市場に出た。店の人の奇異の目をかわしながら、野菜や果物をじっくり眺める僕。所変われば品変わると言うように、日本のスーパーでは見かけないものがたくさんあった。
プレシェーン広場に戻ってきた。これでリュブリャナのメインエリアを一周したことになる。思った以上に楽しめた僕は、大きな満足を得て帰宅。途中、スーパーで色々買い込み、部屋でお菓子を食べながらくつろいで読書。
夜が訪れ、ライトアップされているであろうプレシェーン広場に思いを馳せた。しかし、重い腰はなかなか上がらない。ザグレブからの移動に次ぐ移動に疲れてしまったこともあり、快適なこの部屋が終の棲家のようになっていた。結局、ソファの上でリュブリャナの夜は更けていった。読書に夢中になった僕が眠りについたのは、深夜というよりむしろ明け方に近かった。