授業は月曜から金曜まで90分の3コマ。つまり1日あたり4時間半勉強する。内容はレベルごとの基本クラスが2コマで、残り1コマがビジネス英語クラス。つまり、僕は2クラスに所属していることになる。クラスはどちらも大体10人前後で、国籍はフランス人とブラジル人が過半数。ついでイタリアとスイスが多くて、日本人はただひとり。学校全体の人数比も大体これに準じているといって差し支えない。最初に親しくなったブラジル人に、何故ブラジル人がこんなに多いのかと意見を求めたら、多分景気が良くなっているからだろうと言っていた。
授業形式は問題に答えてパートナーと意見交換したり、チームに分かれてのディベートが主。予想はしていたが、こういう授業に慣れていないので最初はかなり戸惑った。周りはよく喋るし、こっちはうまく話せないし、かなり劣勢に追い込まれる。ただ、1週間もすると慣れてきて、自分のペースで発言出来るようになってきた。それでも、周りの発言数と比べるとずっと少ない。
発言がなかなか出来ない理由はもうひとつある。それは、各自が母国のアクセントを引きずっていてはっきり聴き取れないこと。そして、そういう生徒がきっかけで話が進行したりするから話題についていけない。先生の話は問題なく聴き取れるから、やはり彼らのアクセントが良くないのだ。ただ、不思議なことに僕以外の人間はどうやら癖のある発音でもしっかり聴き取れている様子。きっとここに何か重要な秘密が隠されているに違いない。
よく英語のリスニングに関して脳について言及する人がいる。僕はこれに関して極めて懐疑的だった。しかし、1週間ほど過ごしてようやく理解した。やはり英語を聴き取れるかどうかは音を処理する脳のウエイトが大きい。僕の推測では、印欧系の言語はどれも近い音を持っているから発音に癖があっても脳が処理できるのだ。一方、日本語は印欧系の言語と類似する音が少ないから、少しでも自分が学んだアクセントと異なると聴き取れなくなってしまう。
火曜と木曜は授業が早く終わるので、その後はなるべく街を歩くようにしている。学校が中心地にあるので、どこに行くにも事欠かない。ロンドンは総じて清潔だし、妙な客引きはいないし、とにかく快適。そして、立ち並ぶ建物には統一感があり、西欧の伝統と歴史が街全体を隙間なく覆っている。これほど高い純度で伝統を保持している国をアジアでみるのは難しいだろう。ロンドンを歩いていると、まるで違う惑星に来たかのような感覚に陥る。
そんなロンドンにも困ることがある。それは天気。ロンドンの天気が変わりやすいというのは少しも誇張ではない。日によっては、1時間で晴れと雨と曇りを体験できる。これほど天気が変わりやすい理由は、空を見れば一目瞭然。雲の動きが常に非常に速い。まるで台風直前の時のように雲が流れていく。ちなみに天気の割合は曇りと雨が圧倒的に多く、写真好きは苦難を強いられること必至。
もうひとつの問題なのがトイレ。街にトイレが全くと言っていいほどない。もちろん外に公衆トイレがあるにはあるのだが、ほとんどのトイレが有料(80円程度)。きっと景観を重視しているため、あまりトイレを設置しないのだろう。が、観光客でごった返すロンドンに、これほどトイレが少ないのはどう考えても無理がある。幸い、カフェのトイレを勝手に使っても問題ない文化なので、トイレに行きたい時はスタバなどに行くようにしている。そのため、散歩の際はチェーン店のカフェのチェックが欠かせない。この街で暴飲暴食をするのは極めて危険。もっとも、物価が高すぎて暴飲暴食をするほど懐に余裕はないのだが。