シルクロード / Silkroad Part.11 (カシュガル)

飛行機から [by iPhone5]
カシュガル空港のトイレ [by iPhone5]

9月26日。後ろ髪を引かれながらウルムチを去り、最終地点のカシュガルへ向かった。中国最西端の都市という以外に知識はなく、旅疲れが著しくなってきた僕には期待よりも帰国したい気持ちが上回っていた。しかし、飛行機の窓から見える青空と永遠に続く山々が、そんな僕に気力を与えてくれた。

カシュガルへは夕方に到着。新たな土地への興奮の代わりに僕が感じたのは痛烈な腹痛だった。ここ数日お腹の調子が良くなかったが、今回の腹痛は少しレベルが違う。早々に入国を済ませて、出口付近のトイレへ小走り。すると衝撃の光景が僕を待っていた。便器がない。トイレの中はまるで便器が略奪された跡だった。工事中とも書かれていないし、海外の低クオリティにある程度慣れている僕でもこれには唖然とした。しかも、空港の出口のトイレはここだけ。幸い左側に個室があったのだが、臭いがひどいので差し迫った腹痛を考慮しても入る気が起こらない。僕はお腹と相談して、ホテルまで我慢することに決めた。


ぼったくりタクシー [by iPhone5]

空港を出て、すぐにタクシーを探した。周りを見回すと、両手を広げてこちらに近づいてくる満面笑顔の東欧系の男性が1名。完全にぼったくりだと思いつつも、早くホテルに移動したい一心で、彼のタクシーに乗り込んだ。後部座席に座ると彼は携帯で値段を提示してきた。まさかの80元(≒1,200円)。ホテルは空港からさほど遠くないはずだから相場は20元前後。本当だったら降りて他のタクシーを捜すところだが、一刻も早くホテルに行きたかったので結局60元で承諾。

ホテルに漏らさず到着。が、スタッフの対応が遅くてなかなかチェックインできなかった。英語は通じないし、僕に出来るのは200元を握り締めてもぞもぞすることだけ。このホテルはウルムチと同じ系列のホテルなので保証金が200元であることは分かっていたのだ。待つこと数分、体感時間数十分、ようやく僕は部屋の鍵を受け取ることが出来た。2階の部屋まで慎重に階段を上がって、ドアを開けた途端にトイレに駆け込む。ぎりぎりセーフ。便器に座って、ようやく嫌な汗を拭うことが出来た。


カシュガルの街並み [by iPhone5]
カシュガルの街並み [by iPhone5]
カシュガルの街並み [by iPhone5]
カシュガルの街並み [by iPhone5]
床屋 [by iPhone5]

お腹が落ち着くのを待ってから、街の散策を開始。既にタクシーの中で思っていたのだが、砂煙が舞うカシュガルは、町全体が黄褐色に染まっている。しかも、至るところが工事中で、街全体が大災害の後の復興作業をしているかのような状態だった。加えて僕に衝撃を与えたのは、人にも建物にも中国の面影がほとんどないこと。カシュガルは中国の一都市というより、中国の中にあるイスラム都市と言った方が正しい。荒廃した街にウルムチ以上の疎外感を覚え、あと2日間を無事やり過ごせるだろうかと不安になった。


メニュー表 [by iPhone5]

お腹が痛くても、空腹を感じてしまうのが僕の悲しい性。とあるレストランに入り、僕は特色炒面というメニューを頼んだ。出てきたのは2cm程度に短く切られた麺を使った麺料理。羊の肉と香草とにんにくがたっぷり乗っていて、とにかく辛かった。腹痛の人間が最も敬遠しなければならない代表料理。結局、3分の2ほど食べてギブアップ。お腹を壊した状態で、このボリュームとこの辛さでは食べきれない。


カシュガルの街並み [by iPhone5]
カシュガルの街並み [by iPhone5]
カシュガルの街並み [by iPhone5]

食後は念のためホテルに戻って小休憩。戻る前に小さな商店に入って、水とレッドブルの偽者「レッドキャメル」を買った。味はレッドブルと大差なかった。ホテルの部屋はウルムチほどきれいではないが、広いし2,000円台ということを考えれば悪くない。ベッドに寝転んで明日以降のことを考えていたら、まぶたが徐々に重くなって気が付けば寝ていた。

目が覚めて、お腹の具合が落ち着いていることを確認してから、僕は再び街の散策を開始した。もちろん何かあると困るので移動はホテル近辺に留めた。見たところ公衆トイレはところどころにあるのだが、どこも破滅的に汚そうなので入る気が起こらない。日本の公衆トイレも汚いが、はっきり言って次元が違う。

ホテルの周りは、やはり廃墟のような光景ばかりだった。一体カシュガルで何が起こっているのか。確認したくても、僕には確認しようもない。カメラを持って歩いている外国人は僕だけで、それは疎外感というより実際に疎外されていた。僕に近づいてくるのは風と工事で舞う砂煙だけ。やがて廃墟の街に夕暮れが舞い降りると、辺りは一層強い寂しさに包まれた。腹痛を抱えた異邦人は、通りで見かけた小さな礼拝所で神に祈りを捧げたい気分になった。

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