「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」を見に横浜美術館へ行ってきた。ロバート・キャパとは下の「崩れ落ちる兵士」で有名な報道写真家。実際にはロバート・キャパとはメディア用の架空の人物で、実際に写真を撮っていたのはアンドレ・フリードマンとゲルダ・タローの2人らしい。ちなみにゲルダ・タローはスペイン内戦の取材中に26歳の若さで命を落としてしまった。
戦場まで出向いて写真を撮るという行為を支えるのは、写真への情熱よりも政治的な思想。調べてみると彼らは共にユダヤ系で、母国で少なからぬ迫害を受けていた。彼らにとって写真とは、無慈悲な現実を伝える手段であり、世の中を変えるための起爆剤なのだろう。ゆっくりと美術館の中を歩きながら、趣味で意味のない写真を撮るゆるい人々との根本的な差異を感じてしまった。キャパの「戦場カメラマンの一番の願いは、失業することなんだよ」という発言は、報道写真家という存在が抱える矛盾を物語っている。
帰り道、大道芸人がショーをやっていたので、ついつい階段に座り込んで見入ってしまった。細かい失敗があったにせよ、全体的に楽しいショーだった。最後に彼は茶化しながら将来の不安を口にして、婉曲におひねりを客に募った。残念ながらその時1,000円札がなかったので、僕は500円玉を黒ハットに寄与。周りを見ると、じっくり見ておきながら素通りして帰る人が多く、何とも苦々しい気分になった。路上の大道芸だからという理由で対価を払えない人間は、あらゆる芸術を享受する資格がない。ルネサンスが華開いたのもパトロンがいたからこそ。