ラオス / Laos Part.5 (ルアンパバーン)

寺院 [by iPhone4]
寺院 [by iPhone4]
寺院 [by iPhone4]

ルアンパバーン2日目。近くの露店でサンドイッチとフルーツシェイクを食べて、自転車のレンタルショップを探した。川に囲まれた小さなこの街では、自転車を借りてサイクリングしている人が多い。僕は近くで見つけた店で20,000kip(≒200円)の貸出料と400,000kip(≒4000円)の保証金を支払ってレンタルをした。「保証金は自転車を返したら返してくれるよね?」と聞くと、女主人に「当たり前じゃない」と軽やかに笑われた。東南アジアには何かとトラウマが多いが、この国では疑心暗鬼を振り払えそうな温かさを感じた。

ややペダルの重さが気になる使い古した自転車に乗り、小さな冒険は始まった。まずはマーケットのある道をひたすら直進。この通りには豪華絢爛な寺院が多くあり、神社仏閣めぐりをしても面白い。上座部仏教の寺院が華美なのは、選民思想的な考えが裏にあるからなのだろうか。


メコン川沿いのやしの木 [by iPhone4]
通り [by iPhone4]
通り [by iPhone4]
自転車 [by iPhone4]

マーケットを抜けると道がU字になり、メコン川沿いを走ることになる。このまま川沿いに進めばきっと何かあるだろうと、僕は代わり映えしないのどかな街並みを眺めながらペダルを漕いだ。少し走っただけで汗がじっとりしみ込む襟元。照りつける日差しは、緩やかに、だが確実に僕の皮膚をじりじりと焼いていった。

漕ぎ続けること30分、眩暈を感じながらも無心で走り続けた。気分は走れメロス。「わたしは、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ」というメロスの言葉を頭で反芻しながら、永遠に続きそうなアスファルトの先を見つめた。途中、脱水症状の危険を感じた僕は、誰も客がいない食堂で水を買ってがぶ飲み。500mlのペットボトルは一瞬で空になり、予備としてもう1本買った。


通り [by iPhone4]
橋 [by iPhone4]

更に進むといよいよ舗装された道路もなくなり、道はやや上り坂になっていった。普通ならこの辺で諦めるところだが、「xxxx Waterfall 1km」と書かれた看板が僕に勇気を与えた。しかし、どう考えても1km以上走っているのに水の音すら聞こえない。

もう潮時かとペースを落として進んでいくと、遠くに4人の白人グループが僕に手を振っているのが見えた。近づいて行くと「どこに行くの?」とドレッドの若者。「滝に行きたいんだけど、道に迷ったかもしれない」と僕。すると4人は顔を見合わせやっぱりといった表情。結局、旅は道連れ、地図もないし人もいないし一緒に探そうという流れになった。しかし、いくら探しても滝はない。唯一橋の先に湖がある場所があったが、結局小川だけだった。僕はその近くにひっそりと佇む1軒家を見つけ、そこの住人にこの辺に滝はないかと尋ねた。すると人の良さそうな中年の男性は僕たちが来た方向を指した。彼の「2 hours」という言葉を聞いて、僕たちは滝へ行くのを断念。白人グループとはここでお別れし、僕はこの家の前でしばしの休憩。やはり旅には地図が要ると当たり前のことを痛感しながら、予備のペットボトルの水を飲み干した。


犬 [by iPhone4]
夕暮れ [by iPhone4]

家に着くまでが遠足という言葉を噛み締めて、一層ペダルの重くなった自転車を漕いでホテルに戻った。帰り道も水分を大量に摂取したため、体中の血液が水と入れ替わったような妙な気分。ホテルに着く時には、もう夕暮れが迫っていた。昼間の凶暴さを失った弱々しい太陽と、脚が棒になった疲労困憊の僕がシンクロする。


マーケット準備中 [by iPhone4]
マーケット [by iPhone4]
階段 [by iPhone4]
階段 [by iPhone4]

カビ臭い部屋で水圧の弱いシャワーを浴びた後は、湿っぽいベッドに仰向けになった。目を閉じて無心でいると、皮膚がピリピリと悲鳴をあげているのがよく分かる。もう部屋を出るのは勘弁願いたい状況だったが、夕飯を食べないわけにはいかない。僕は着替えていつものマーケットに行き、ふらふらと店を探した。するとマーケットの脇に取り放題で10,000kip/1皿の屋台を発見。その屋台で欲張っておかずを全種類取り、Beerlaoでひとりで乾杯。焼きそばからすえた臭いがしていたが、こういう味だと信じて胃の中へ。

部屋に戻った僕は、遠藤周作の「死海のほとり」を読み始めた。本当なら昼にハンモックで優雅に読書が理想だが、外で読書でもしようものなら文字以外にハエと格闘せねばならないのが現実。ページをめくる音が聞こえるほど静かな部屋で本を読んでいると、瞼の重みに耐えられなくなるまでさほど時間はかからない。カーテンから漏れる太陽の光を確認した時には、本は序盤のところで無造作に伏せられていた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です