平和記念資料館を目指して広島へ
一昨日は 平和記念資料館 を目指して広島へ向かった。移動は新大阪から広島まで新幹線。どうでもいいが、片道1万円という高値はうまい棒に換算すると1,000本になる。
広島に降り立つと、曇り空と記憶がうろ覚えな街並みがが目の前に広がった。その中でまず目に付いたのは駅前の北海道フェアー。
小腹がすいていた僕は、吸い寄せられるように函館名物の海峡焼を購入し、ひとりでこそこそ頬張った。広島で北海道を食べる東京の男。
不気味な園児キャラとの遭遇
一日のメインは平和記念資料館だが、それだけでは時間が余るので手始めに広島城へ向かった。街を歩いていると、なぜか視界の端々に不気味な交通安全の園児キャラが現れる。
手を上げて横断歩道を渡りましょうという意図はわかる。だが、その陰鬱な表情は、底なし沼に沈みかけて必死に助けを求めている ようにも見える。
天守閣からの景色に想いは乗らず
広島城に到着した。思った以上にこじんまりした城だったが、せっかく来たので天守閣まで登り、淡々と写真撮影をこなした。曇り空のせいで映えないと思いきや、城や神社はむしろ曇天のほうが妙にしっくりくる気がする。
毛利元就もこの天守から同じ景色を眺めていたのだろうかと想像する。しかし、胸に迫るものはなく、エセ歴史好きの限界が露呈しただけだった。
時が止まった原爆ドームの前で
日本を代表する負の遺産、原爆ドーム。言うまでもないが、これは1945年の原爆投下で被害を受けた建物を当時の姿のまま残した世界遺産で、戦争の惨禍を伝える象徴だ。
観光客で賑わう中、この建物だけが時を止めたまま立ち尽くし、まるで周囲との調和を拒んでいるように見えた。かつては同じような建物が街中に存在し、このドームもその一部として街と溶け込んでいたはずだ。建物を一瞬で空洞にする原爆の威力は凄まじいの一言に尽きる。
原爆の現実と女子中学生
続いて 平和記念資料館 へ向かった。原爆という究極の暴力がどれほどの被害をもたらしたのかよくわかり、なぜこんなことが起こったのかという憤りが込み上げてきた。特に「一部の科学者は告知なしの投下に反対した」という記述は、被害国の人間からすると衝撃的。
館内には、当時の惨状を写した写真や遺品が淡々と並ぶ。そのすぐそばを、修学旅行が楽しくて仕方ない様子の女子中学生たちが笑いながら通り過ぎていった。
おぞましい記録と無邪気な笑い声の対比に思わず言葉を失った。彼女たちにとって原爆の過去は、お化け屋敷と大差ないのかもしれない。しかし、皮肉なことに、その感覚こそが 平和が続いている証拠 とも言える。
平和への祈りはどこへ届くのか
続いて 原爆死没者追悼平和祈念館 へ向かった。螺旋状の神秘的な通路をゆっくり下っていくと、原爆被害者の遺影が静かに浮かび上がるフロアにたどり着く。そばには被害者を検索できる端末も並び、原爆を絶対に風化させないという強い意志 を感じた。
さらに奥へ進むと、原爆被害者の体験記を読めるスペースがあった。ページをめくるほどに胸が沈み、まるで底なし沼に引きずり込まれるような感覚に襲われた。
──1945年8月を境に誕生した2つの生き地獄。
その苦しみの中に、いまだ取り残された人々がいるという現実はあまりにも重い。
何十人分もの体験記を読み終えて外へ出ると、その重さをいったんベンチに置くように腰を下ろした。遠くでは、遠足の小学生が無邪気にはしゃいでいる。その声は、まるで別世界の音のように聞こえた。
過去や戦争やアメリカや軍国主義を恨んでも始まらない。それにしても、みんなで平和を祈ったところで、鶴を何羽折ったところで、どこの誰にこの想いを届ければ今の平和が永遠になるのだろう。僕には皆目見当もつかない。