北京3日目は、万里の長城へ。新幹線の切符を買えるか心配だったが、受付でガイドブックを見せたらあっさり発券してくれた。新幹線に乗り込むと、時期外れなのか車内はガラガラ。電車が動き出して五分もすると、流れる景色は途端に緑豊かになり、建設中の建物が至る所に見えた。発展する中国。
辺境に作られた万里の長城の周りには、今もほとんど何もない。入口でチケットを買って、前の人についていくと、そこは勾配の緩やかな女坂だった。目指すは北八楼。終わりのなさそうな地続きの壁は、そのまま中国の悠久の歴史を物語っていた。
万里の長城は空気の乾燥がひどく、飲み物がないと耐えられない。さらに炎天下の中で階段を上り下りするため、少し歩いただけで呼吸困難のような苦しい状態になる。段差がまちまちな階段が憎らしい。よろめきながらどうにか北八楼に到達した時には、嬉しさよりも帰りたいという気持ちが勝っていた。地図で見ると1、2キロだが、フルマラソンを走り切ったような疲労感。乾いた強風が汗まみれの体を手荒く癒してくれた。
歩いて戻るのは到底無理なので、休憩してからロープウェイで下山。狭い箱に詰め込まれて、僕は薄汚れたガラス越しに外を眺めた。万里の長城は異民族の侵入を防ぐためのものだが、長城があろうとなかろうとこんな山奥まで攻め込む気が知れない。昔の人々はたくましい。万里の長城を体験して、中国の想像を絶する規模の大きさを思い知らされた。
5時前に北京北駅に戻ったら、帰るついでに徒歩圏内の北京動物園へ。受付の前に行くと、中年女性が箱を持って立っていた。受付のひとりかと思ってお金を差し出そうとしたら、なんと彼女は物乞い。しかも、手の指がほとんどなかった。悲惨な状態に同情して2元ほど寄付。
動物園の中は唖然とする広さ。短時間で効率よく回るのはまず不可能と判断。早足で園内に点在する動物を見て回ったら、閉園時間の6時はあっという間に訪れてしまった。
ホテルに戻って、ベッドで大の字になって休憩。まだ300元近くお金が残っているため、近くの高級マッサージに行こうと決意した。その名も良子健身。入口の自動ドアが開くと、きれいなお姉さんたちがお出迎え。選んだのは230元(≒3,300円)のVIPコース。きらびやかな店内と女の子の若さは若干風俗を彷彿とさせる。担当の女の子は容姿端麗で腕もよく、すっかり(健全な意味で)全身骨抜きにされた。
マッサージが終わった後、彼女はネームプレートを指して自己紹介のようなものを始めた。だが、中国語のため全く理解できない。僕が首を傾げていると、今度はゆっくりと発音して自己紹介をしてくれた。問題はそこではないのだが、指摘しようにも出来ないもどかしさ。結局、理解した振りをして笑顔で終了。こういうミスコミュニケーションは、海外旅行の面白さのひとつかもしれない。