故宮の後は、隣にある小高い景山公園へ。頂上を目指して歩いていると、明の崇禎帝が首をくくったとされる伝説の木を発見。これが明滅亡の象徴かと感慨に浸っていたら、ガイドブックに「既に植え替えられたもの」と書いてあった。頂上の万春亭までの階段は予想以上に長く、たどり着いた時には息も絶え絶え、服が汗で体にくっついていた。
お茶を飲んで休憩したら、次は隣接する北海公園に入った。この公園には、湖に囲まれた瓊華島とチベット式建築の白塔がそびえている。白塔は丸みがあって魅力的なフォルム。中国式建築の中にこういう毛色の違う建物があると一層引き立つ。惚れた。
最後は天安門広場に行こうと、故宮の外側を歩いて戻った。途中、何故か警官に笑顔で敬礼をされたが、状況を飲み込めず結果完全無視。ごめんなさい。北海公園から天安門までは予想以上に長く、暑さと疲労に完全に打ちのめされてしまった。はたから見たら、きっと僕は水を求めて砂漠をさまようゾンビのようだっただろう。
汗にまみれて天安門広場に到着。まずは近くの売店で命の水を買って一気飲み。日陰で一息ついてから、広場に入るための荷物チェックを受けた。本丸だけに警備が厳重。天安門広場は、歴史を知らなければ単なるだだっ広い広場でしかない。だが、現実にはここで自由への戦いが二度も潰えて、多くの人々の血が流れた。そう考えると感慨深さと共に、歴史の重さが僕の両肩にずしりとのしかかってくる。
8時間ぶりのホテル。僕はドアを開けるなり無料の水を飲み干し、すぐさま湯船に浸かって全身の疲れをほぐした。日にあたり過ぎて、水に触れるだけで皮膚の表面が痛む。振り返ってみると、あまりに密度の濃い一日だった。しかし、まだ終わらない。何故なら夜はこれから。北京では夜8時にならないと日が沈まない。
(続く)