社会主義国家の洗礼

北京2日目。朝から人生初の北京地下鉄に乗り、天安門東駅を目指した。お目当てはもちろん、中国の心臓とも言える 天安門広場 だ。
改札の仕組みがよく分からず、駅員につたない英語で尋ねてみたが、返ってきたのは堂々たる中国語。全く融通が効かない。
ちなみに、北京の地下鉄はどこまで乗っても一律2元(≒30円)で、改札の前に 毎回荷物チェックが待ち構えている。セキュリティの厳重さに、さすがは社会主義国家と納得。
天安門は庶民の空間



天安門東駅を出ると、目の前には堂々たる天安門。カメラ片手にその前をうろうろしていたら、国内旅行者と思われる中国の人に写真を頼まれた。もちろん中国語で。
撮影を終えて天安門をくぐると、そこは意外にも広々とした市民の広場。若者がバスケをし、年配の男性たちは将棋のような盤ゲームに夢中になっていた。
観光名所の中に、市民の日常が息づいている光景は新鮮だった。いや、正確には──市民の空間が観光名所へと変わってしまった と言うべきかもしれない。
中山公園にて秘密のお誘い





広場を進んでいくと、左手に 中山公園 の入口が現れた。ここは孫文が祀られている記念碑的な公園で、敷地はとにかく広大かつ緑豊か。
池ではボートを楽しむ人がいて、そのそばでは年配の夫婦が優雅にチークダンスを披露中。ここでは時間がゆったり流れている。
しばらく歩いて道に迷っていると、若い女の子が突然話しかけてきた。もちろん中国語なので、気まずいまま無言でスルー。
あれがもし 密かなデート的な誘いだったとしたら──僕は大きな何かを見逃してしまったことになる。
壮大すぎる故宮、そして暑さとの戦い








中山公園の後は広場に戻り、いよいよ 故宮 へ。入り口の午門を目にした瞬間、その圧倒的スケールに思わず息を呑んだ。故宮のその堂々たる造りには大国の貫禄が漂っている。
だが、奥へいくら進んでも 似たような建物が延々と続くのには正直飽きてしまった。加えて、時間は昼を過ぎて暑さもピーク。空気が乾いている分、日本よりはましに感じたが、夏の北京は容赦なかった。
崇禎帝の木




故宮を出たら、すぐお隣の 景山公園 へ。丘を登っていると、明の崇禎帝が首をくくったという伝説の木を発見。
これが明滅亡のシンボルかと歴史ロマンに浸ったのも束の間、ガイドブックにはあっさり「植え替え済み」のひと言。秒で現実に引き戻された。
そのまま頂上の 万春亭 を目指して階段をひたすら上る。予想外に長い道のりで、着いた時には 汗だくで息も絶え絶え、服はぴったりボディスーツ状態。歴史ロマンどころか、僕はただの登山部員と化していた。
白塔に恋する北海公園の午後







お茶でひと息ついた後は、更にお隣の 北海公園 へ。湖に囲まれた瓊華島の中央には、チベット式建築の白塔がそびえていた。
そのフォルムは柔らかく、どこか包み込むような美しさ。周囲の中国式建築と並ぶことで、その異色さがいっそう引き立っていた。正直、惚れた。
(続く)