カンボジア3日目。朝4時半に起きて、朝日を見に再びアンコールワットへ。中に入る時、強制お布施に遭ったものの、アンコールワットの朝日はそんな不快な出来事を軽々と吹き飛ばしてくれた。ゆっくり昇る情熱の太陽は、アンコールワットから世界に朝を告げていた。
朝日を見た後は市内観光。まずはポルポトの犠牲になった市民を祭る、通称キリングフィールドへ。敷地内に入るとすぐ、骸骨が敷き詰められた塔が見えた。既に観光地化しているこの場所は、人の死を商売にしているようで複雑な気分。敷地内にある寺院の入り口には、障害を抱えた人々がお恵みを待っていた。
続いてオールドマーケット。中には食堂とあらゆる種類の食べ物を売る店が渾然一体となっていて、異様な熱気と臭気を発していた。一通り混沌の中を練り歩き、通り沿いの露店でお土産を購入。正直もっと安い店はあるのだが、敢えてここで買うことにした。報われない山積みの骸骨を見た後には、少しは寄与をしようという気分になる。
ホテルに戻ってしばしの休憩。そして、日が和らぎ始めた3時過ぎから街の散策を再開した。カンボジアでは、ベトナムと同様、店が立ち並ぶ通りを歩いていると色々な人から声をかけられる。しかし、「No」と言えば彼らは深入りしてこない。ベトナムとは全く異なる反応にいささか肩透かし食う。仏教は人々の心に謙虚さを植えつけるのだろうか。
カンボジア人の日常を見てみようと、6号線から横道へ入ってみた。シェムリアップはメインの6号線を少し外れると、途端に未舗装の道になるから驚く。土は赤土で、日本人の僕の目にはとても新鮮に映った。通りで見かける子供は丸裸の子が多く、ある子供は歩きながらおしっこをしていた。微笑ましくも衝撃的な光景。子供におもらしという概念は存在しない。
夜は外国人向けの小奇麗な店が並ぶ通りで食事。ビールは0.5ドル、料理は各皿3ドル程度。春巻きとチャーハンと焼きそば風の麺料理をおいしく頂いた。
この日見たカンボジアの人々の生活は、都会のそれとは対極にあった。確かに貧しいかもしれないが、人々は自然に身をゆだね、せせこましく生きている人を見かけない。僕はローズがこう言っていたのを思い出した。
「日本は産業で儲けて、カンボジアは農業。農業のほうが大変だけど、どちらが幸せかはわからない。」