熊谷の夜は焼き鳥とサウナ



仕事を終えた金曜の夜。普通なら家でまったりするところだが、この日の目的地は熊谷だった。理由はなんと古墳。最近、華金を完全に趣味に振り切るのが熱い。
仕事終わりに東京駅から新幹線へ乗ると、熊谷はあっという間。大人になったら時間は金で買うべしと最初に言った人はすごいと思う。
熊谷駅に着いたら、まずは夕食。駅ビルに入っている登利平という店に入り、鳥御膳的なものとビールを注文した。焼き鳥がおいしくて大満足。
食事を終えたらホテルへ向かった。駅近で、しかもサウナ付き。部屋もきれいで、これが5,000円台というのはかなりのコスパだった。
この日はもう特にやることもない。無理に街へ繰り出すでもなく、部屋でだらだらすごした。
古墳旅の前に国宝・妻沼歓喜院で途中下車

翌朝は、名産品だらけの朝食ビュッフェへ。正直、産地がどこだろうと違いはわからないが、名物と銘打たれると、急にいいものを食べている気分になる。




この日の目的は、行田にある さきたま古墳群。神話や古代史探究の延長で、ついに古墳まで来てしまった。
ただ、調べていると周辺には他にも気になる場所がある。中でも国宝のお寺があるらしいので、まずはそこへ行ってみることにした。
熊谷駅からバスに乗り、群馬方面へ20分ほど乗って着いたのは 妻沼歓喜院 。境内を一通り見た時点では、正直これが何故国宝なのかと思ったが、奥へ進むと急にど派手な建物が見えた。
この建物は有料かつガイド付きで、地元のボランティアのおじいさんが案内をしてくれた。歓喜院は、その遊び心のある緻密な絵画が有名らしく、なんとこれは民間から寄付を募って完成させたものらしい。
他にも、昔の領主が松平氏に負けて以来、松を植えなくなったとか、門の鯉が鯱になり龍になり、そこから登竜門という言葉が生まれたとか、印象に残る話をたくさん聞けた(実際、歓喜院にも梅や竹は描かれているが、松はない)。
確かにガイド付きの観光は、自由はないし時間を食う。だが、その分ひとり旅では得られない情報が手に入るのも事実。妻沼歓喜院は、古墳へ行く前の寄り道としては大正解となった。
錆びた鉄剣、古代国家の輪郭を語る


妻沼歓喜院から熊谷駅に戻ると、もう昼どきだった。朝から国宝を見て、ガイドの話に聞き入っていたので、時間の進み方が妙に早い。
昼は駅ビルにあった佐野ラーメンにした。古墳を見る前にまずは腹ごしらえ。最近、ちゃん系の影響であっさり醤油系のラーメンが熱い。



食後はいよいよ本来の目的地、さきたま古墳群 へ向かう。熊谷から隣の行田駅へ移動し、そこからバス。
到着して最初に向かったのは、さきたま史跡の博物館 だった。表記は「埼玉」なのに、読みは「さきたま」で非常に分かりにくい。
この博物館の目玉は、稲荷山古墳から出土した 金錯銘鉄剣。ポイントは鉄剣に刻まれた「獲加多支鹵大王」という文字で、これが雄略天皇を指すとされている。
さらに、この文字と似たものが九州にもあるという。そうなると、ヤマト政権の勢力圏がどこまで広がっていたのかという話につながってくる。鉄剣1本で射程が一気に広がる古代史の世界観。
こういうものを見ると、古墳をもっと調べれば、まだまだ同じような手がかりが出てきそうに思えてくる。宮内庁管理の陵墓についても調査の許可が下りればいいが、現実には簡単ではないのだろう。
日ユ同祖論を鵜呑みにしている人間としては、このあたりにどうしても陰謀論の匂いを感じてしまうが、それはまた別の話。
それにしても、錆びた剣から150近い文字を読み取れたという科学の力はすごい。技術の進歩は未来だけでなく、過去を読み解くためにも使えるのだと改めて感じた。
稲荷山古墳──登って歩ける古墳の魅力





博物館を見たあとは、周辺の古墳を歩いて回った。ここからが、さきたま古墳群の本領発揮。
関西の巨大古墳はスケールこそ圧倒的だが、言ってしまえば木々に囲まれて全体が見えない「ただの森」。その点、ここの古墳群は近くから形を確認できるし、稲荷山古墳 については、実際に登って棺があった状況を確認できる。
ちなみに棺については、将軍山古墳の博物館にしっかりしたレプリカがあるので、そこで細部の確認ができる。
この場所は、古代史への興味を満たしてくれるだけではなかった。周囲は自然が多く、歩いているだけでハイキングのような気分になる。風はかなり強かったが、季節としてはこの時期に来て正解だった。
古墳散歩の締めは露天風呂

問題は帰りだった。バスが1時間に1本しかなく、周辺で時間を潰す場所もない。そんな中、地図を見ていたら茂美の湯という温泉を見つけた。
これは行くしかないということで、迷わず向かった。ここは内湯がひとつで、あとはすべて露天風呂という最高の造り。しかも、小さめのお風呂がいくつもあって湯めぐりをしているような気分になれる。
露天風呂に浸かりながら、3流男性アイドルたちのテレビ番組をぼんやり見る。チーム対抗でゲームをするだけなのだが、これはこれで面白い。平和なひと時。
サウナにも2回入って大満足。人も少なく、かなりの穴場だと思った。また来たいが、ここまで来る機会は早々ないだろう。

さらに帰りも運がよかった。温泉からの無料バスで、北鴻巣駅まで送ってもらえた。駅からは上野東京ラインのグリーン席で帰宅。
のんびり読書でもしようと思っていたが、湯上がりの眠気には勝てない。気づけば、あっという間に品川駅だった。
熊谷近辺は、古墳の宝庫だった。さらに群馬も近い。地図を眺めるだけでも、まだまだ発掘しがいがありそうなエリアだと思う。
今回は金曜の仕事終わりに移動するというプチ旅行に挑戦してみた。ホテルを楽しめて、丸一日フルに観光に使えるのでかなりありだと思っている。派手さはないが、完成度の高い週末の過ごし方 を見つけてしまったかもしれない。