朝からお大師さんにご挨拶



この日は、旅のメインとも言える 天岩戸神社 へ向かう。日本神話のルーツを探る旅の始まると言ったら少し大げさだが、そういうこと。
バスの本数が少ないため、天岩戸方面への到着は午後1時ごろ。まずは高千穂へ行き、そこから岩戸方面へ別のバスに乗り継ぐ。
岩戸行きのバスが少ないため、早く高千穂についても意味ないのだが、観光できる可能性もあるので早めに出発した。
駅に向かって歩いていると 今山大師寺 というお寺を発見。時間もあるので立ち寄ってみることにした。階段を上って、山道を少し歩く。すると見えてきたのは、巨大な空海さんの像だった。
山の上から、まるで我々を見守るように立っているお大師さん。ただし、お大師さんはここに来たことはないらしい。とりあえず、お賽銭と合掌だけしておいた。
神話の旅はバスから自転車へ


延岡駅のカフェで少しゆっくりしようと思っていたら、もうバスの時間。土地勘のない地域のバスは、目的地に着くのか不安になるが、終点なので「高千穂バスターミナル」としっかり表示されていた。
車内は10名程度で、かなり快適だった。バスの中ではのんびり車窓から田園風景を眺めながら、『アマテラスの暗号』を読む。充実した時間。ほとんど寝ていた気もする。
そうしているうちに、バスはあっという間に 高千穂 へ到着。バス停前には観光案内所があり、なんとそこでレンタサイクルを扱っていた。
係員のイケメン男性に聞くと、天岩戸神社までは自転車で30分ほどだという。バスは1時間以上待つことになるので、迷う理由はなかった。というわけで、天岩戸まではレンタサイクルで向かうことに決定。

予定が決まったところで、まずは近場で腹ごしらえをする。入ったのは、一番最初に見つけたラーメン屋。味はあっさりした鶏ガラ系で、ごく普通に食べやすい。話を聞いたら、なんと高千穂の町で初めてのラーメン屋らしい。
天岩戸神社、神様たちの会議場



電動自転車の説明を受けて、いざ出発。道はひたすら道路沿いを東へ進むだけなので、ルート自体はかなり簡単だった。
とはいえ、景色はまったく単調ではない。勾配のある田園風景が広がり、風を切って漕ぐのがとにかく気持ちいい。
日本にこんな場所があったのか、と思わず驚く。山と田畑の重なり方があまりに美しく、ここなら天孫降臨もあったかもしれない、と妙に納得してしまう。



しばらく走ると、天岩戸神社 に到着した。ところが駐輪場が最初の鳥居の先にあり、自転車と一緒に鳥居をくぐることになった。神聖な領域に自転車を押しながら入るのは、相当決まりが悪い。
天岩戸神社は、アマテラスが隠れたとされる天岩戸を御神体として祀る神社。西本宮と東本宮があり、公式には両社ともアマテラスを祀る神社とされている。
まずは西本宮へ向かうと、入口に3本、5本、7本の藁が垂れ下がったしめ縄が見えた。通称「七五三縄」で、いわゆる結界の役割を果たす。アマテラスを祀っている神社なので 強い霊力を抑える意味でもあるのだろうか。多少の畏れ多さを感じつつ、お作法通りの参拝を済ませた。




西本宮の先には、天安河原 がある。へそを曲げた天照大御神が岩戸に隠れた際、八百万の神々が集まって相談した場所と伝えられている洞窟で、西本宮から岩戸川沿いに歩いて行く。
そこへ向かう途中には露店がいくつも並んでいて、思ったより俗っぽい。しかし、先へ進むと空気が変わってくる。小川が流れ、うっそうとした山道になり、雰囲気はどんどん神秘的になっていった。
やがて人の列が見え始めた。その先には、祠のような窪みに小さな鳥居があり、長い七五三のしめ縄がかけられていた。確かにここなら、神様たちが集まって会議をしていても不思議ではなさそう。
神話の里で湯めぐり


次は来た道を戻り、川を渡って東本宮へ向かった。西本宮や天安河原のにぎわいとは違い、こちらはかなり質素な雰囲気。
本宮の先には、七本杉 と呼ばれる御神木が並んでいた。実はこの先には、アマテラスが隠れたとされる岩戸がある。ただ、御神体として扱われており、一般公開はされていない。


天岩戸神社の参拝を終えたあとは、近くの八大龍王水神に立ち寄ってから、気になっていた 天岩戸の湯 へ向かった。小高い丘の上にあるので、これはなかなか期待が膨らむ。
結論から言うと、施設自体は極々普通の銭湯。ただし、高千穂を一望できる眺めは最高だった。さらにサウナと、キンキンに冷えた水風呂があったのもポイントが高い。
雨雲の先に高千穂峡



帰りは空がどんより曇り始め、雨が時折パラついてきた。ヘルメットがあるので多少の雨よけにはなったが、とにかく一心不乱にバスターミナルを目指す。
ところが、運よく途中で雨は止んだので、せっかくだから 高千穂峡 へ行ってみることにした。高千穂峡は、阿蘇山の火山活動による火砕流を五ヶ瀬川が侵食してできた峡谷で、天然記念物にも指定されているらしい。
自転車で曲がりくねった道をひたすら下っていく。すると、湿度の高い秘境の森のような場所にたどり着いた。
自転車を止めて、右も左もわからないまま人の流れについていく。すると目の前に現れたのは、断崖絶壁の渓谷だった。下には濃い緑の川が流れていて。振り返ると、岩壁の間から滝が落ちていた。
自然が作り出した偶然の産物に息を飲む。こんな素晴らしい場所があったのかと、素直に驚いた。同時に、ボートを漕いでいる人たちが猛烈にうらやましくてしかたなかった。この瞬間、高千穂の再訪が決定したと言っていい。

さて、帰りは高千穂神社を少し見てから、バスターミナルへ戻った。神話に温泉に渓谷と、短時間で詰め込めるだけ詰め込んだ気がする。
レンタサイクルの時間もちょうどよく、料金は4時間で2000円だった。これはかなり安い。しかも会計のときにお土産のお茶までもらったし、本当にいいところだ。
人間よりロボットを待つ夜


高千穂から1時間ほどバスに揺られ、ホテルの近くに到着した。高千穂の余韻を抱えたまま、次に悩むのは夕飯をどこで食べるかだ。
そこで思い出したのが、近くにあった ロボット居酒屋を銘打つお店。評判もよかったし、開店直後なら人気店でも入れるかもしれない。恐る恐る店員さんに予約なしと伝えると、運よくカウンター席に通された。
頼んだのは、じとっこ炭火焼き、刺身盛り、軟骨の煮物、そしてビール。最高の一日の終わりだけに、ビールがやたらとうまい。料理のレベルも高かった。
ただ、残念だったのは、カウンター席にはロボットが料理を運んできてくれないこと。動線的に仕方ないのだろうが、まさか 人間の接客よりロボットの接客を望む世界 が来るとは思わなかった。未来は案外、居酒屋のカウンターで実感するものらしい。
お会計は締めて4,800円。少しお高めではあるが、料理のクオリティを考えれば妥当な価格だった。満足度は非常に高く、延岡に来たら是非立ち寄りたいお店。