消極的決断、残るは万里の長城
3日目の北京にして、早くも主要どころは回ってしまった。残されたアクティビティは、もはやひとつしかない。
それは万里の長城。
別に行きたくはないが、お腹の調子も悪くないので行くことに決めた。消極的決断。
ところが、外に出ると風が強く、空はどんより。今にも雨が降り出しそうな空模様だが、このくらいの方が空いていて逆にちょうどいい。

朝食は強風に煽られながら、台味小食というテイクアウトのお店で肉夹馍を買った(≒200円)。こちらは昨日のと違い具材に色々入っていて、これはこれでおいしかった。


万里の長城へは、まず清河駅まで向かい、そこから新幹線に乗り換える。清河駅はターミナル駅だけあって広くてきれい。各地方に行く駅なので、かなりお金をかけている印象。
南京に行ったときと同様、外国人は自動改札を使えない。駅員にパスポートを提示する専用レーンに並ぶ必要がある。改札の最中、前のおじさんが駅員に食ってかかっていたが、ある意味日常のワンシーン。
長城は風との戦い


電車でわずか15分ほどで、八達嶺長城駅に到着した。だが、そこから地上に出るまでがやたらと長い。地下通路を延々と歩き、長いエスカレーターが終わらない。
立ち止まるほどではないが、平日にしてはかなりの人がいた。これがハイシーズンの休日と考えたら恐ろしい。
外に出た瞬間、市内とは明らかに違う鋭い寒さが刺さる。しかも、風が猛烈に強く、マフラーを頭巾のように巻かないと帽子が飛ぶ。
近くに券売所らしい場所があったので、片道ケーブルカーのチケットを購入した。料金は100元(≒2,000円)とかなりお高めだが、帰りに心が折れる用の保険代わり。


万里の長城へたどり着くまでには、しばらく歩く必要がある。土産物屋や飲食店が立ち並ぶ通りを抜けていく、いわば前哨戦だ。
到着した直後は景色がどこかおぼろげだった。だが歩くうちに、何が昔と同じで、何が変わったのかが少しずつ判別できるようになってきた。
──記憶の力は侮れない。
初めての海外ひとり旅でここまで来たので、脳裏に深く刻まれているのだろう。
北楼ルートで極寒トレッキング





チケットを購入し、北楼ルートへと出た。こちらは傾斜がきつい分、より高い場所まで行ける。
ちなみに前回は真夏だった。暑さと乾燥で、正直なところ地獄の登頂だったのを覚えている。だが、今回はその真逆。風速は体感で相当強く、気温は1℃。ほぼ冬山登山である。
が、覚悟して臨んだはずが、意外にも全然きつくない。寒さは歩くことで自然と中和され、むしろ心地よくなってくる。段差がまちまちの階段は相変わらず観光客泣かせだが、普段の踏み台昇降運動のおかげか全く苦にならない。
風はものすごいし指先はかじかむものの、SNSに動画を投稿するくらいの余裕はある。六楼あたりで足を止め、雄大な景色を静かに眺めることもできた。
長城完歩、そして思い出の回収



約1時間で北ルートの最終地点、北八楼 に到達した。きつくないとは言いながら、ここまで登るとさすがに達成感はある。
やはり重い腰を上げて万里の長城に来たのは正解だった。中国のスケールと自然の雄大さを同時に感じるならここがベスト。初海外ひとり旅の思い出もしっかり回収できた。
唯一残念だったのは、強風の影響で帰りのロープウェイが運休していたこと。とはいえ、前回のように心が折れることはなかった。下山ルートはアップダウンが少なく、足取りも軽いままだった。
帰りは駅員との攻防戦
帰りは急いで電車の切符を買いに向かった。駅を間違えるわけにはいかないので、行きのレシートに印字された「清河」を指差して見せる。
すると駅員の女性が「清河〜八達嶺長城までを買うの?」と何度も大声で確認してくる。こちらは清河駅に戻りたいのだと伝えると、あっさり発券された。
この手の融通の利かなさには、本当にイライラする。北京から来たのだから北京に戻るに決まっているし、違う方向ならそもそもレシートを見せない。
幸いだったのは、運休したケーブルカーの返金がすんなり進んだこと。最初に間違えて入場チケットを出してしまい断られたが、ケーブルカーの券を見せると笑いながら対応してくれた。
接客は国民性ではなく、あくまで個人の人柄だと改めて思う。


帰路の段取りが整ったところで、飲食店エリアでご飯を食べることにした。
リブ肉の煮物で可食部は少ないが、今の自分にはこのくらいがちょうどいい。どこか香港で食べた味に似ている。もしかすると、あちらのチェーンなのかもしれない。
帰りは西直門に寄り道


帰り道、何か面白いものはないかと西直門駅に降りてみた。だが拍子抜けするほど何もない。
北京は、ごく一部のターミナル駅を除いて、駅前が驚くほど栄えていない印象がある。東京の「駅前=繁華街」という感覚とはだいぶ違う。
ちなみにここには北京北駅がある。前回はこの駅から万里の長城へ向かったのを思い出した。
やはり締めはダンプリング


最寄駅に着くころには、ちょうど夕飯どきだった。だがあまりに寒く、遠出する気力は残っていない。
そこで、帰り道で見つけたダンプリング系の店に入ることにした。看板を見て気づいたが、ここは上海で気に入った 袁记云饺 だ。
店内では店員がだらけていてがっかりしたが、味はきっちりおいしい。「不辣」を選べるのもポイント。値段は32元(≒650円)と手ごろだった。
セットについていた 蓮子緑豆汁 は、薄いお汁粉のような優しい甘さ。蓮の実が入っていて、いかにも胃腸に良さそう。美味しんぼの知識で恐縮だが、中華の基本はやはり医食同源。
騒々しい眠れぬ北京の夜
余談だが、今日はぐっすり眠れると思っていた。ところが隣に親戚一同らしき団体が泊まっていたらしく、夜中まで騒がしくて眠れない。
部屋の行き来でチャイムを連打し、大音量で音楽を流す。日本ではなかなかお目にかからない傍若無人のフルコース。
壁の薄いホテルを選んだ自分にも非はある。とはいえ、これはさすがに堪えた…。
目が覚めたのは、向こうが完全に寝静まっている朝7時。いつもより遠慮なくシャワーとトイレを使ったのはいうまでもない。