田子坊で旅の締めくくり



最後は 田子坊(Tian Zi fang)に言ってみることにした。かつての路地裏をリノベーションして作られたエリアで、昔ながらの住宅がカフェや雑貨店、アートギャラリーに生まれ変わった人気スポットだ。
もっとも、ここは完全に観光客向け。正直行きたいというより消化試合に近い。
最寄りの打浦橋路駅を降りると、田子坊はすぐ目の前。脇道のような入口をくぐると、バーやお土産屋がごった煮状態で密集していた。
他のエリアに比べて欧米系やイスラム系の観光客が目立ち、やはり王道の観光地といった印象。ただ、香港の蘭桂坊のような熱気はない。夜になれば違った表情を見せるのかもしれないが、そこまで待つ気力もない。
ということで、後輩へのお土産にご当地キティちゃんグッズを買って早々に退散。これにて上海旅、ひとまずフィナーレ。
上海最後の夜は焼き小籠包と羊肉串

残る楽しみは夕食のみ。駅直結のショッピングモールの地下にあるフードコートをのぞいてると食欲をそそる店がわんさかある。
そんな中で選んだのは、南京東路で行列ができていた 小腸生煎。ここは焼き小籠包が名物らしく、酸辣粉と、中身が全部違う焼き小籠包のセット(≒600円)を注文してみた。
正直、焼き小籠包は邪道だと思っているが、肉がぎっしり詰まっていて、いい意味で期待は裏切られた。カリッとした皮とジューシーな餡のコントラストがたまらない。

これで帰ろうかと思ったものの、胃袋的にまだ名残惜しので、もう1軒ハシゴすることにした。最後に食べたいのはやはり羊の串。
遇見小面というお店が羊を扱っていたので、ここで5本セットと魯肉飯っぽいご飯を注文(≒1,000円)。さすがにご飯までは食べきれなかったが、香ばしい羊肉だけはしっかり完食した。
上海はどこもフードコートが充実しているので本当に便利。ひとり旅なら個別の店を探すのがバカらしくなるほど。

ということで、田子坊は少し肩透かしだったが、これで主要な観光スポットは一通り制覇できた。胃も心も達成感で満たされ、帰りの電車は余韻に浸った。
が、上海駅から歩いて帰ろうと思ったら、見事に迷って1時間近く歩く羽目になってしまった…。大体旅はプラスマイナスの帳尻が合うようにできている。
まさかのボランティアでフライト変更




最終日は午後イチの便。特に観光もなく、身支度を整えて空港へ直行した。出発時のドタバタを反省し、今回はきっちり3時間前に到着。
長蛇の列に並び、ようやく順番が来てパスポートを渡すと、係員がスマホの翻訳アプリで日本語を見せてきた。内容は支離滅裂だったが、「ボランティア」「協力」といった単語を見てピンとくる。
──そう、オーバーブッキングでフライトを譲ってくれる人を探しているのだ。
提示された 補償額は1,100元(約22,000円)。現金でもWeChatでもOKとのことで、予定も特にないので快諾した。
が、ここからが地獄。手配で受付カウンターは完全に戦場状態で、怒号が飛び交い、30分以上の放置プレーとなった。
ラウンジにて中国再訪を誓う



結局、オーバーブッキングの返金は無事完了し、残高を見るとニヤニヤが止まらない。さらに嬉しいのは、フライトの変更で 2時間の余裕が生まれたこと。その時間をラウンジでのんびり過ごすことにした。
中は激混みだったが、どうにか壁向かいの自習机ポジションを確保。オーダー式の中華メニューがあるとのことで、謎の麺料理と小籠包を注文してみた。
これが想像以上のクオリティで、小籠包は専門店顔負けの味。実は今回の旅で一度も食べられなかっただけにラッキーだった。
食後はデザートやお菓子、コーヒーまで堪能し、ほぼ吐く寸前。どうしても無料だと歯止めが効かない…。
写真を見返しながら思う。ビザ免除をきっかけに久々に訪れた上海は大正解だった。
経済発展は物質的な豊かさだけでなく、人の成熟も生む ということを実感した。店員さんたちのホスピタリティには何度も驚かされたし、どこに行っても不快な思いをすることはなかった。
そして何より、久しぶりに本場の文化に触れられたことが嬉しい。僕は若いころから中国の歴史や文化が好きで、長らく封印していた中国熱が確実に再燃し始めているのを感じた。
そして、WeChat Payには1,100元の残高。これはもう中国再訪は天の思し召しと思うしかない。