誕生日パーティーに飛び入り参加!?




来た時から気になっていたのは、隣の家が妙に騒がしい。ローカル感全開のダンスミュージックが響き、神秘的なダヤク族のイメージは音とともに崩れ落ちていく。
そんな中、家主の女性がガイドを通して「誕生日パーティーに行ってみたら?」と勧めてきた。ガイドもあっさりOKを出し、気づけば僕たちは赤の他人の誕生日会にノリで参加することになった。
ただの家族の集まりかと思いきや、家の内外に ざっと30人以上がひしめく大宴会。音楽に合わせて踊る人、食べ続ける人、談笑に夢中な人…まさに自由奔放なパーティー空間だ。
驚いたのは、知らない外国人の僕を昔からの仲間のように自然に受け入れてくれたこと。というより、これだけクローズドなコミュニティだと、他人とか家族とかそんな境界線自体ないようにも思える。
ランチをいただきながら女性たちとおしゃべりをしていると、ダヤク族にも日本は知られていることが分かった。日本製のコスメを見せてもらって、ガイド経由で色々つたない話をした。
最後は記念撮影をしようとなり、誕生日の主役であるおばあちゃんを真ん中に写真を撮った。男性陣は外で飲んだくれていたため、女性ばかりの構図になったが、その絵面が我ながら面白い。
ロングハウスに舞い込んだ踊り子


ロングハウスに戻って一息ついていると、民族衣装の若い女性たちが不意に登場。何事かと思えば、その場で衣装の手直しを始めた。
もしやツアー用の催し物かと身構えたが、どうやら全くの偶然。彼女たちは伝統舞踊を学ぶ学校の生徒で、この日はたまたま撮影と練習のためにここを訪れていたようだ。
ダヤク族のインフラ事情

パランカラヤを出た途端、スマホは完全に音信不通。これを機にデジタルデトックスとでも行きたいが、ふと鍵付きのWi-Fiの電波を見つけてしまった。
ガイドに聞くと「近くの雑貨屋でパスワード買えるよ」とのこと。行ってみたら、極めて不安定ながらもどうにか接続に成功した。
ついでにロングハウスに戻る時にトイレ事情もチェック。宿泊者用のトイレが建物横にあり、古くて見た目は正直微妙だが、水はかけ放題なので意外と清潔感はある。
問題はシャワーで、お湯が出ないこと。ガイドは笑いながら「せっかくだからシャワーより川に飛び込んだ方がいいよ」と豪快な選択肢を提案してくれた。
街散歩──ダヤク族の死生観に触れる













仮眠のあと、家主のおばさんに案内されて街を散歩した。ポテチを持った家の子供も一緒についてきて、これがツアーコンテンツと思えないが、このゆるさがいい。
のどかな道を歩いていると、神輿のようなものが密集する不思議な場所に入っていった。これはロングハウスにもあったもので、これは 中に遺骨が納められているお墓 なのだ。
ダヤク族の信仰では、死後に人は天国へ行くとされるが、その過程がユニークだ。一度埋葬した遺体を掘り起こし、数週間かけて儀式を行い、神輿に骨を納めて死者を送り出す。この埋葬儀式は Tiwah(ティワ)と呼ばれ、つい最近も村で行われたという。
さらに村の生業についても聞いてみた。村の人口は約2,000人で、かつて果物やゴムが主産業だったが、ゴム価格の下落により、今は川底から金を採るのが稼ぎの柱になっているという。

ちなみに、ここだけでなくパランカラヤでよく見かける窓のないこの怪しいビル。
何とはこれは、高級食材である 燕の巣 を取るために、暗所を好む燕を飼っているのだそう。まさか高級食材の生産地がこんな辺境に潜んでいるとは思いもよらなかった。
初めての素手ディナー


夕食は家庭の味そのもの。魚の揚げ物、鳥の煮物、厚揚げなど、庶民派ブュッフェで見た顔ぶれが再登場した。唯一違ったのは、その食べ方。
インドネシアでは食事は基本的に手で食べる。
ガイドとドライバーと一緒にテーブルを囲んでいると、どうも僕がスプーンとフォークを使うのが浮いている気配。そこで空気を読んで、人生初の素手の食事に挑戦してみた。
感想は…微妙。爪の間に食べ物が入るのが気になって仕方ないし、素手で温かさを感じてもだからどうしたというのが正直なところ。ただ、骨付きの魚は小回りがきくので食べやすい。
音と闇に包まれる夜



食後は伝統音楽の演奏会。太鼓、ギター、木琴、ドラが持ち寄られ、まるで縁側で始まる夕涼みのようにゆるく演奏が始まった。
誰かに見せるためではなく、楽器があったから弾いてみたくらいの気楽さ。途中で家主の女性が踊り出したり、楽器を取り替えたり、ほぼ即興のセッションは続く。
僕はといえば、家の子供に捕まってカードゲームやビリヤード。変拍子とエキゾチックな音色をバックに、完全に親戚のおじさんになっていた。
演奏が終わると就寝準備。入り口から外を眺めれば、電球ほどの明かりしかなく一面が真っ暗。部屋の灯りを消すと、鈴虫のような虫の声が心地よく響く。
夜は意外にも暑すぎず、Tシャツ1枚で快適。寝る前にネットでもと思ったが、こんな夜くらいはデジタルデトックスと決め、虫の合唱に身を委ねた。