ここは都会のスラム街!?


昨日は食べまくってしまったので、朝食は各自で好きに取ることにした。個人的に 朝の茶餐廳だけは外せない ので、お腹にまだ昨日の名残を感じつつも、支度を整えて外へ。
重慶マンションの階段を降りると、目の前はゴミだらけの路地。ここだけ完全に スラム街の風景 で、思わず足が止まる。ハイブランドが軒を連ねる繁華街にこんな場所が存在しうるのか、誰かに問い質したくなる朝だった。
朝から豪華に茶餐廳


近場で選んだのは 銀龍茶餐廳 というお店。米麺にクロワッサン、そこへミルクティーまでついた中洋折衷の欲張りセットを頼んでみた(≒1,000円)。
朝からこんなに食べて大丈夫かと一瞬不安になるが、ソーセージマフィンとハッシュポテトの朝マックよりはヘルシーだと考えることにする。
神様の総合商社、黄大仙へ


この日は 黄大仙 を訪れてから香港島へ向かう、王道の観光デー。とはいえ、女性陣はどうしても買い物を挟みたいらしく、途中からは自然と別行動になる予定。旅慣れたメンバーだと、こうして コアタイム制で動けるのが気楽でいい。
黄大仙は香港で一番有名な道教のお寺。しかし実際には道教だけでなく、あらゆる神様が同居する神様の総合商社のような場所 だ。
地下鉄を降りて最寄り駅に着くと、飲食店が軒を連ねる駅ビルに繋がっていた。誘惑に勝てず、僕たちは 香港名物のエッグタルト をしっかり賞味してからお寺に向かうことにした。
線香片手にスリル満点のお焼香




朝10時だというのに、境内はすでにかなりの人だかり。入り口にてとりあえず龍の像を念入りに撫でてみる。何のご利益かは正直よく分からないが、テンションは若干上がった。
人混みをかき分けて長い線香を買い、それぞれお気に入りの神様にお祈り。ほぼ満員電車のような密度の中で、火のついた線香を持つのはスリル満点。誰かの服を焦がすんじゃないかと気が気でなかった。
お焼香タイムが終わると、女性陣はここの名物でもある地下の占いへ一直線。どうしても試してみたいらしい。すでに体験済みのKと、そもそも不信心な僕は休憩しようと近くのカフェへ入った。
世俗人のコーヒーブレイク

考えてみれば、香港でカフェに入った記憶がほとんどない。いつも食べ歩き一辺倒だっただけに、こうして静かにコーヒーを飲む時間が妙に新鮮だった。
フェリーで香港島へ、景色と記憶を乗せて



続いて尖沙咀のフェリー乗り場から船に乗り、いよいよ香港島へ向かう。ここは湾越しに高層ビル群が一望できる絶景スポット。Kの提案で、女性陣と僕で記念写真を撮ってもらった。
このメンバーは学生時代、同じ喫茶店でバイトしていた仲間たち。気づけばもう20年以上の付き合いになる。ほぼ4半世紀と考えると、時の流れの早さに少しゾッとするし、それでも関係が続いていることに改めて驚く。
きっと秘訣は 継続の努力を一切しないこと。だからこそ、ゆるく心地よく続いてきたのだと思う。
チャーシューご飯は正義




わずか5分ほどのフェリーで写真を撮りまくり、いざ香港島に上陸。九龍とは景色が一変して、高層ビルが林立するさまはまるで別の国に来たようだった。
もう午後1時を過ぎていたので、僕おすすめの叉焼飯(チャーシューご飯)を食べにチェーン店の 太興 へ。全部盛りの七寳飯を人数分平らげる食欲はさすがになく、スープや単品を織り交ぜて控えめに注文した。
それでもボリュームは十分で、味もみんな大満足。これからも叉焼飯普及委員会の活動に励んでいきたい。
食後、なぜか話題は漢方薬へ。その流れでNが飲んでいる漢方を一部おすそ分けしてもらうことになった。年をとると話題が健康にシフトするのは真実。
デザート探しに街をぶらり




食後は甘いものを求めて、蘭桂坊や上環を散策しながら、目指すは 尚品鮮菓果汁 というフルーツスタンド。カラフルな盛り合わせやジュースがずらりと並んでいて、どれにするか全員でしばし悩む。
すると、Kが迷わず先陣を切って店員さんに質問攻め。気づけばすっかり打ち解けて、ほとんど友達のように話し込んでいた。その自然なコミュ力に一同感嘆。
選んだ盛り合わせはどれも新鮮で甘くて、味は文句なし。こんなにおいしい果物が手頃に食べられる環境は、何度来ても羨ましいと思う。




ここからは男女別れて別行動。これと言って目的のない僕とKは、Kの提案で 大館 という イギリス流時代の監獄 を見に行くことにした。場所は上環と中環と間なので徒歩圏内。
大館に足を踏み入れると、そこは昔の警察署と監獄をリノベしたオシャレな文化スポット。列ができていたビクトリア監獄は当時の構造をそのまま再現していて生々しかった。想像より圧迫感があり、当時は相当窮屈だったことが窺える。
美術館に見る香港の過去と現在



次に向かったのは美術館。怪しげな螺旋階段を登っていくと、目の前に広がったのは前衛的な映像と作品の数々。
一見すると何が何だか分からない作品もあれば、社会と個人の関わりを鋭く突きつけるような展示もあって、とにかく刺激的だ。
少し前にイギリス統治時代の監獄を見てきたばかりだからか、全く違う時間と空間が頭の中で交錯する不思議な感覚 が残った。香港という街の多層的な顔を、またひとつ覗いた気がする。
旺角で感じる香港の熱気

夜は今回の旅の個人的なメインイベント、元同僚とのディナー。場所は前回も訪れた潮州料理の 明記潮館 だ。
旺角(Mongkok)で待ち合わせをしていると、目の前に広がる人混みと熱気に一瞬ひるむ。それでも、変わらず賑わうこの光景にまだまだ香港は元気だなとほっとする自分がいた。
潮州料理を囲む特別な夜



軽く挨拶を済ませてプレゼントを渡し、円卓に座ったらいよいよ食事スタート。日本組は潮州料理が初めてで、どの料理も興味津々で眺めていた。
僕はというと、牡蠣のかき揚げとガチョウの煮物を食べれたので大満足。話題は、彼らの馴れ初めから日本と香港の文化まで広がり、気づけば時間が瞬く間に過ぎていった。
少しおこがましいかもしれないが、こうして国を超えて友人たちが自然に打ち解けている姿を見ていると、自分が小さな架け橋になったような気持ちになる。
お酒が入っているせいか、つい感傷的になってしまっただけかもしれない。まあ、こんな夜も悪くない。
ワイルドな親切とささやかな誓い



食事のあとは、毎回香港に来るたびに飲んでいる苦茶をみんなで試すことに。正直、絶対無理だろうと思っていたら意外とイケると好評でびっくりした。
締めはこれまた恒例のデザートタイム。入ったのは近くにあった Joyful Dessert Lab というモダンなお店。台湾風のメニューもあったが、僕は迷わずいつもの亀ゼリーを注文。
食べながら、Wが翌日マカオに行く計画を話していた。すると、Nが持っていたガイドブックをその場でビリッと破り、マカオのページだけ手渡すというワイルドな親切を披露。
そんなやり取りを眺めながら、宴はゆるやかに終盤へ。最後にワイマン夫婦にお礼を言って、東京に来たら必ず声をかけるようお願いした。
何故なら、今回の食事は全部彼らのおごりという太っ腹すぎる展開…。帰り道、僕たちは 東京に来たら少なくとも今半のコースはご馳走しよう と固く誓い合った。