韓国という国は世代によって全く印象が違う。昭和世代にとっては過去の歴史がつきまとう付き合いの難しい国であるのに対し、今や若い子にとっては最先端の流行の発信源になっている。実際、会社の若い子が海外に行ったと聞くとほとんどが韓国だ。そんな話を旅行繋がりの友人にしてみたら、なんと僕以外全員韓国に行ってことがない!それなら是非行ってみようと提案して、本格的な夏が始まる前のソウルに行くことにした。中年の男4人で。
フライトはそれぞれ別で、僕は成田空港からの夜便を選んだ。羽田-金浦が一番近いのだが、1万円以上節約できる成田-仁川で行くことにした。これが貧すれば鈍するを証明することになろうとは、チケットを買った時点では知るよしもない。
出発当日、はるばる成田空港のT3に着いたらフライトが遅延していた。しかも、1時間以上。今回、通常でも午後10時着で市内への移動を考えたらギリギリなので、最悪ホテルに着けない可能性さえ出てきてしまった。出鼻を挫かれたイライラで止まらない舌打ち。が、焦っても仕方ない。そう思って、代わりに回転寿司でやけ食いをして心を落ち着けることにした。
結論、寿司はおいしい。しかし、満腹中枢を刺激してもイライラは収まらない。
午後11時30分にソウルに着いた。そして、小走りで駅のプラットホームに着いた時のは45分。そこで時刻表を見たら、なんと終電は56分!間に合った。これをソウルの奇跡と呼んでいいのか分からないが、とにかくソウルまでは行けそうなので一安心。
電車は鈍行でなかなかソウル駅に着かない。ようやく金浦空港を過ぎて、もう少しかと思っていたら、DMCという駅で次々と人が降りていった。あれよあれよと乗客が減っていくのを見て、僕は気付いた。
終電はソウル駅までいかない。
時刻表の青文字はDMC駅止まりを意味していたのだ。恐らく僕と同じフライトの人々は同様の戸惑いを感じながら、真夜中のどこだか分からない場所に放り出されことになった。ここからの選択肢は2つ。タクシーに乗るかバスに乗るかになるが、調べてみたらソウルはバスが24時間やっている!
幸い、バス停はすぐそばにあった。しかし、実際のところ外国でバスに乗るのはかなりハードルが高い。その上、この時の僕は1ウォンも持っていなかった。それでもバスを選んだ理由は、T-Money Cardというプリペイドカードを会社の後輩から貰っていたから。「多少移動するくらいの金額は入ってると思います」という言葉を信じて、内心ドキドキしながらそれらしい端末にタッチをしたら、運転手は何も言わない。「勝った!」と心の中で呟いて、薄暗い車内で一息ついた。
一難去ってまた一難、とまではいかないがこのバスはホテルの最寄りの安国 [Anguk] までいかず、結局乗り換えることになった。地図を見誤って一駅遠くまで行ってしまったが、乗り換え先のバス停は5分ほどで見つかった。
韓国のバスを乗って驚いたのは、バスを利用する人の数。午前1時だというのに、頻繁に乗り降りがあった。もう夜遊びする年齢でもないが、公共交通機関が24時間あるのはうらやましい。
午前2時前にホテルに到着した。深夜着による肉体的疲労よりも、飛行機遅延に始まる一連のドタバタによる精神的疲労が大きい。こんなことになるなら最初からタクシーに乗ればいいだけの話だが、ひとり旅にとってタクシーは最後の手段。お金もかかるし、何かとトラブルになりやすい。
ホテルの部屋は広くもないが、バスタブもあってまずまず。僕はこの顛末を後発の友人に報告し、ベットに入った。目を閉じて今日一日を振り返ると、不思議と外国に来たような感触がない。とはいえ、ソウルに来たのは実に12年ぶり。ソウルがどれだけ変わったのか、明日この目で確認しよう。