ファイナルアカウント 第三帝国最後の証言 (2022)

本作は、ナチスドイツの関係者や民間人にホロコーストについてインタビューをした貴重なドキュメンタリー。既に戦後70年を経過しているので、インタビュー対象者はみな老境を迎えており、その意味で「ファイナルアカウント(=最後の証言)」なのだろう。ちなみに、この映画の存在を知った時点で上映中の映画館が高崎しかなく、遠路はるばる「シネマテークたかさき」まで行くことになってしまった。

インタビューに答えたのは主に親衛隊の面々と虐殺が行われた付近に住んでいた住人。ホロコーストに対する認識や罪の意識はまちまちで、「知らなかった」と言い逃れる者もいれば「自分に責任はない」と開き直る者もいた。日本でも太平洋戦争は間違っていなかったと主張する人々がいるが、この傾向はドイツでも変わらないのだと知った。一方、間接的とはいえ、親衛隊としてホロコーストに加担したことを反省し、若者と議論する老人もいた。若者は老人の自虐的な考え方に敵意むき出しだったが、これも日本と変わらない。程度の差はあれ、敗戦国は敗戦国の道をたどるのだと実感。

このインタビューは、どんな形であれホロコーストに関わったことを糾弾し、反省を絞り出すことを目的としているように見えた。しかし、当時の社会情勢を考えた時、未曽有の集団犯罪の歯車として動いた人々を追い詰めることには疑問も残る。集団ヒステリーのような状態でシラフでいることは難しいし、ヒトラーの思想に抵抗していればそもそも生き残ることができなかっただろう。とはいえ、被害者の立場からすれば、加担した者にはどんな理由があったにせよ罰を求めたいに違いない。加害者が絶対悪と認知された状況における加害者・被害者の関係性は本当に難しい。

個人的には、加害者に反省を求めるだけでなく、ユダヤ人に対する差別意識の根源はどこにあるのか、ホロコーストに対して”本当は”どう感じていたかなど本音を引き出すインタビューをして欲しかった。言い訳や否定を聞いても建設的なものは生まれない。もう少し多角的な視点でインタビューを試みて欲しかったというのが正直な感想。

とはいえ、高崎のミニシアターで映画を観るというのはまたとない経験になった。

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