500万人が死んだコンゴ紛争の現実
「500万人以上が犠牲になった戦争」
こう聞けば、世界は当然その惨禍に目を向けるはずだ。しかし、同等の犠牲を出したコンゴ紛争に関して、世界はほぼ無関心だった。
この紛争は単なる内戦ではなく、ルワンダ虐殺の延長戦 という側面を持つ。
ルワンダ虐殺の終結とともに、加害者側のフツ族がコンゴに大量に流入したことが火種となり、そこに 鉱物資源をめぐる各国の思惑 が絡み、無秩序な戦争の泥沼が生まれた。
コンゴ紛争には、「ツチ族 vs フツ族」 という分かりやすい対立構造はない。むしろ、小規模な戦闘の果てしない積み重ね とでも言った方がいい。
泥沼化した理由──政治の腐敗と無関心
なぜコンゴでは、これほど広範囲に 無秩序な内戦が続いたのか?
本書の著者は、「政治家のビジョンの欠如」と「腐敗した政治制度」 を主な原因に挙げる。
確かに、アフリカの独裁政権は珍しくない。リーダーが 国を私物化し、国民を顧みない という構造は、コンゴだけの問題ではなく、アフリカ全体に共通する傾向だ。
だが、それだけでは説明がつかない。
問題の本質は、先進国の無関心 にもある。もしコンゴがヨーロッパの国だったら、もし資源ではなく石油が絡んでいたら、西欧諸国はこんなにも冷淡だっただろうか。
欧米化が必ずしも進歩ではないにせよ、帝国主義時代から続く「西欧 vs アフリカ」という差別構造 は、未だにこの地域の運命を左右しているように思える。
知るほどに引き込まれるアフリカの闇
ルワンダ虐殺を経て、ルワンダは目覚ましい経済発展を遂げた。僕自身、ルワンダを訪れた時、アフリカにも明るい未来がある と思った。
しかし、ルワンダのポール・カガメ政権は、近年 独裁色を強めている という指摘がある。つまり、アフリカの成長の希望と思えたルワンダですら、また過去に退行しつつある のかもしれない。
コンゴ紛争を知れば知るほど、ルワンダの表面だけを見ていたこと を思い知らされる。
本書を読んで、中央アフリカ諸国の歴史に詳しくなれたのは意外な収穫だった。だが、同時に、知れば知るほど、他のアフリカ諸国の泥沼へと引き込まれていく。
コンゴ紛争だけでなく、スーダン、リベリア、シエラレオネ……
アフリカの紛争に終わりはあるのか?
知ることで見えてくるものがある一方、見えたところで 解決策がないことの虚しさ もまた感じてしまうわけで…。