Left to Tell (2014)

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ルワンダ虐殺関連の本はこれで3冊目。既に読んだ2冊は国連軍、ジャーナリストという外部の立場からこの虐殺を解明しようとしたのに対し、こちらはツチ族の若き女性が体験した地獄のような日々を通して、愛と信仰の奇跡を証明してくれている。この本によって虐殺に関する知識は深まらないが、正に虐殺の当事者であり、九死に一生を得た彼女の体験は前述の2冊よりも虐殺の実相を雄弁に物語っている。

主人公の一家は、ルワンダの中でも裕福で信仰心に厚く、地域の名士だった。それゆえ、虐殺が始まるとツチ族の避難シェルターとなってしまい、両親は抵抗むなしくフツ族過激派に殺されてしまう。一家離散の末、兄弟とも離れ離れになった彼女は牧師の家に匿われるのだが、執拗なフツ族過激派の捜索から逃れるために、他のツチ族女性7名と一緒に畳一畳ほどのトイレで身動きも取れずに生活することになる。

普通なら気が狂ってもおかしくない状況だが、彼女はこの苦境を信仰の力で乗り越える。一般的には、ここで人間の強さや信仰の偉大さに感動するのかもしれないが、不信心な僕は彼女の前向きさと精神の強さを受け入れきれず、読みながらこれはフィクションではないかと何度も勘繰ってしまった。例えば、虐殺の後、彼女は家族を殺した犯人を赦すのだが、自分には絶対にできないことだと思った。彼女の行動や思考は十二分に尊敬に値するが、それを下支えするものが神へ信仰というところがどうしても繋がらない。

ルワンダ虐殺を被害者の視点から描いたこの本は、虐殺の実相を理解する大きな助けになった。一方で、この本は自分の信仰に対する冷めた考えをより強固にすることにもなった。つまり、宗教とは個人の意思を超越し、人を傷つけることもできれば、人を赦すこともできる危ういマインドコントロールの手段だということ。

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