今年の夏休みはチェルノブイリへ。そこは人為によって永遠に回復不能なまでに汚染された土地。いまや世界が知るチェルノブイリという言葉には、ある種ファンタジーの色彩が宿っている。しかし、東北の原発事故以来、その実在は僕の中で妙に現実味を増し、いつしか奇妙な親近感を覚えるようになっていた。
チェルノブイリはウクライナの首都キエフにあり、今回アムステルダム経由で向かうことにした。初めて乗るKLMはハイネケンを扱っており、普段飛行機ではお酒を飲まないが、せっかくなのでいただくことにした。ひとり空の上で乾杯。
半日近いフライトでようやくアムステルダムのスキポール空港に到着。体は疲れているが、久しぶりのヨーロッパの雰囲気に心が躍る。空港を出ると、湿度を感じさせない軽やかな風が心地よい。僕はまず空港近くのホテルにチェックインし、ベッドの上で思い切り大の字に跳ねた。
日没まではまだ時間があるので、バスに乗って市内中心地へ。アムステルダムには同心円状にいくつもの運河が流れており、さながら街に命を与える血管のような役割を果たしている。そして、芸術で黄金時代を築いただけあって、至る所に美術館がある。
しばらく歩いて、飲食店が立ち並ぶ通りで食事をすることにした。どうやらオランダ料理店はこの辺りにはなく、八割がハンバーガーかピザ。僕はテラス席のあるカフェを選んで、山盛りのハンバーガーを堪能した。港町の気質なのか、店員がフレンドリーで感じがいい。
一通り街を歩いて観光終了。バスでホテルに戻るつもりが、残念ながら(あるいはいつも通り)3km以上離れた位置で降ろされた。見知らぬ国でローカルバスを使って目的地にたどり着くのは、きっとシンガポールで一軒家を買うくらい難しい。
味も素っ気もない住宅地からホテルを目指すも、迷ってなかなか着けない。ようやくたどり着いた時には、ちょうど日没。時差もあってどっと疲れが出た。とはいえ、短い時間でアムステルダムの雰囲気を十分楽しむことができた。残りの楽しみは最終日にとっておこう。