かわいいベッドでぐっすり眠った翌日。建物1階のファストフードショップで血の滴るようなラザニアを食べて、部屋でしばし読書。この日は丸一日使えるので、時間にも心にもゆとりがある。
読書に切りをつけたら、Marinaが露店を出しているという広場に行ってみることにした。場所はメインストリートから少し外れており、歩きながら不安になった。果たしてこの界隈にマーケットなんてあるのだろうか。無常にもその不安は的中し、その広場はひとっこひとりいないもぬけの殻。気分は店子に夜逃げされたオーナーの気分。彼女がわざわざ場所を書いてくれたメモ書きを、僕はまじまじと見返した。
気持ちを切り替えて、僕は再び中心地に戻った。そして、買い物客で賑わう通りを練り歩いた。誰も立ち止まらないストリートミュージシャンが哀愁を誘う。元気な音色が、華やかに物悲しく、通りに響き渡っていた。
通りの終わりは広場になっていた。その名をプレシェーレン広場。露店もいくつか出ており、地元の子供たちや観光客がめいめい食事や語らいを楽しんでいた。かくいう僕は必死にピントを合わせて、しかめ面で写真撮影。
プレシェーン広場の先はいわゆる旧市街。威風堂々たる建物が与える圧倒と感動。これだけ道が広いと人通りも気にならず、中世ヨーロッパ然とした街並みをじっくり堪能することができる。この箱庭感はプラハに近いが、プラハよりもずっと落ち着ける。正直、リュブリャナにはあまり期待をしていなかったが、これは嬉しい誤算。
(続く)