友人に誘われて、経堂のすずらん商店街の祭りに参加させてもらった。神輿を担ぐなんて何年振りだろう。半纏を羽織って、帯と鉢巻を締めると否応なく気持ちが高ぶる。これぞ日本男児。外に出ると、秋とは思えない日差しが僕たちを歓迎してくれた。歩く度にアスファルトの固く冷たい感触が、薄っぺらい足袋から直接足の裏に伝わってくる。
まずは神輿を担いで、近くの神社まで。神輿自体はたいして重くないのだが、派手に揺さぶるためとにかく肩が痛い。みんなで「セイヤ!ソイヤ!」と掛け声をかけながら歩くと、全身が熱くなり汗が顔ににじむ。何百年の時を経ても、神輿を担ぐ時の、この高揚感と一体感はきっと大昔の人々が感じたものと同じだろう。
休憩は大体15分置きくらいにあり、その都度ビールや軽食が振舞われた。適度な運動の後に飲む白昼のビールは最良の清涼剤。体力は奪われても、また頑張ろうという気持ちになる。
大声を上げながら、閑静な住宅街を闊歩する半纏をまとった人々。周辺住民の温かな目線が心の支え。ようやく神輿を奉納する神社に着いた時には、汗で鉢巻の色がすっかり変わっていた。しかし、まだこの重労働は終わらない。今度は来た道を戻らなければならないからだ。2、3時間はかかった工程をもう一度繰り返すのかと思うと気が滅入る。まっさらだった僕の足袋は、もうすでに履き古したかのようにボロボロになっていた。
掛け声は変わらず響くも、日は徐々に傾いていった。やがて辺りは暗闇に包まれ、神輿には灯りがともった。客観的に見れば祭りの雰囲気は最高潮。だが、僕たちの体力はそれとは反比例するように消耗していった。友人の目は既に力を失っており、かくいう僕は、足の疲労に耐えながら両肩の痛みを癒してくれる神様をずっと探していた。交代交代とは言え、まさかこんなに長時間神輿を担ぐとは思いもよらなかった。ようやくスタート地点に戻った時には、大きな深呼吸と安堵のため息。
盛大な三本締めをして神輿を戻したら、待望の打ち上げ。会場では寿司とビールが用意されていた。僕と友人は神輿を担ぎ続けた極度の疲れに乾杯し、挨拶回りに来てくれた運営の方々にお礼を言った。祭りとは本来その地域で行われる行事にも関わらず、縁もゆかりもない人間を受け入れてくれたすずらん商店街の方々に感謝。日本の伝統行事に触れること自体が久しかったし、有意義な体験になった。半纏姿も似合っているという噂だし、今度は自分の地域の祭りに参加したい。帰り際、僕は今日履いた足袋がまた使えるかどうかを確認しながら、痛い肩を何度も回した。