翌日は、台湾高速鉄道に乗っていざ最南の高雄へ。車内の作りが日本の新幹線とそっくりだったのだが、後で聞いたら日本と技術提携しているとのこと。
電車の旅に途中下車はつきもの。僕は思いつきで高雄手前の台南で下りてみた。が、これが大失敗で、駅前は見事なほど何もなかった。やはり旅は計画。
高雄車駅に到着。2年振りの懐かしい街並みに心が躍る。そして、予想以上の炎天下に全身から汗がにじみ出る。ホテルに着いたら、休む間もなく結婚式場の下見へ。当日に右往左往して式に遅刻する事態は絶対避けなければならない。自分の地理感覚からすると長丁場になるはずが、式場は意外とあっさり見つかった。安堵する明日の付添人。通りの運動場では、若者がバスケットボールに熱中していた。
用が済んだので、近くの夜市に立ち寄ることにした。まだ日没前だったが、既に屋台の大半は営業を始めていて、客もそこそこ入っていた。きっと空が暗転する頃には身動きがとれなくなるだろうから、この時間帯がきっとベスト。出店は、台北と比べるとやはり海鮮を扱うお店が多かった。しかし、いくら海鮮推しとは言え、蒸し暑いこの地で寿司の屋台があるのには驚愕した。恐るべき文化伝播。
いよいよ結婚式当日。朝早く起きて、まずは赤いご祝儀袋に「愛河永浴」としたためた。これは決まり文句で、読んで字のごとく愛の河に永遠に浴するという意味。まずい筆のご祝儀袋をバッグに入れて、僕は銀色の蝶ネクタイをつけて凛々しさとともに出発した。
会場についたら、新婦に挨拶をして記念撮影。純白のウェディングドレスを着た彼女は美しく、同時に、母親としての強さを身にまとっているようだった。続いて、新婦の親戚に案内され、準備中の披露宴会場に入った。ここに関係者が集まって、式のリハーサルをするのだ。付添人を務めるのは、男女4名。出身も様々で高雄、台北、韓国、日本とインターナショナル。台北出身の男性とすぐに打ち解け、緊張はすっかりほぐれた。
いよいよ式の始まり。ゆうに500人はいる巨大な会場の中を、僕は高雄出身の女性とペアで歩いた。そして、新郎新婦と間違えているのではないかと思うほど写真を撮られ、無事に任務は完了。あとは豪華な食事を味わいながら、付添人の友人らと談笑。細かな違いはあれど、本質的に結婚式のフォーマットは日本と変わらなかった。目立った違いといえば、基本的に参加者は私服でよく、新郎新婦と直接関係のない人も招かれるくらいだろう。
式終了後のひとコマ。実はこの結婚式の翌週に別の台湾の友人の結婚式があり、参加できない代わりとして、お祝い写真を撮った。手書きメッセージが判読できないレベルだがこれもまたよし。式の終わりにも関わらず、協力をしてくれた付添人のみんなに深謝。そして、僕を招いてくれた新郎新婦にも感謝を捧げたい。異国の結婚式に参列できる機会なんてそうそうない。ロンドンの奇跡と言ったら大げさだが、欧州の島国で勉強した成果はこんなところにもあった。いずれにせよ、2組とも愛の河に浴すること、永遠に。
式が終わったら、すっかり肩の荷が下りた。純粋な旅行者に戻った僕は、観光客で賑わう六合夜市に向かった。2年前と比べると海鮮の店が少ない気がしたが、それは季節のせいかもしれない。牡蠣の揚げ物やら羊肉ヌードルを汗だくで食べて、すっかり満腹になった。
短い旅の終わりは、美麗島駅。世界に駅多しといえども、ここより美しい駅は数えるほどしかないだろう。僕は座り込んで、巨大なステンドグラスを仰ぎ見た。そして、目まぐるしかった一日の密度を解きほぐし、異国で出会った友人の門出を祝福する証のつもりで、この壮麗な天井を気の済むまでカメラに収めた。