2月末日に新年会と銘打って、ロンドン留学時代の友人と京都で再会した。アジア系がほとんどいない学校だったし、加えてロンドンという場所や短い滞在期間を考えれば、そこでの母国の人との出会いは控えめに言っても奇跡的。
京都駅に集まった僕たちは、懐かしさに飛び跳ねつつ6人で記念撮影をした。実は僕以外の全員が女性のため、撮った写真を見るとまるで現代のハーレム。もう昼食の時間が迫っていたので、南禅寺に移動して、日本庭園が美しい料亭で優雅に湯豆腐を堪能した。気分は大人の修学旅行。
南禅寺から哲学の道を歩いて銀閣寺へ。哲学の道では、瞑想に耽ることなく雑談に花咲いた。銀閣寺はおそらく修学旅行で訪問して以来。が、どこの記憶の引き出しを探しても当時の銀閣寺が見つからず、逆にまっさらな気持ちで楽しむことができた。ディズニーランドが欧米文化の巨大テーマパークだとすると、銀閣寺はさながら日本文化のミニチュアテーマパーク。
続いて、友人が勧めてくれた詩仙堂。場所は銀閣寺から更に北。隠居した漢詩の大家の住まいだそうで、つまり未来からのお宅訪問。白砂の小奇麗な庭を前にして、正座をして獅子おどしに耳を傾けると、俳句のひとつでも書きたい気分になる。室内は質素な和室で、落ち着く反面、別世界のようにも感じられた(残念なことに撮影禁止)。こういう生活様式を捨て去った僕たちと、この時代の人々との間には大きな断絶がある。一体、どの糸をたぐり寄せたら僕たちは彼らと繋がるのだろう。
詩仙堂に満足した後は、祇園に出向いて甘味処へ。葛切で有名なお店があり、閉店前に無理やりお邪魔させてもらった。葛切りに馴染みが薄い関東の人間には、ざるそばのように黒蜜に付ける食べ方は斬新。なんでも、関西では葛切りをすき焼きに入れるそう。
一日の締めはやはり食事。人間の欲求は食欲に始まり食欲に終わる。友人お勧めの店で堪能したのは、なんと味噌汁。具と味噌を選べるシステムになっていて、僕は山芋(おとしいも)の白味噌を注文した。甘い味噌と崩れた山芋から生まれるまろみのある味は、初めて体験するものだった。昔の家屋を改築した店内も風情があり、再訪したい隠れ家的良店。
最後は近くのカフェで翌日の予定決め。が、話しているうちに徐々に話題は脱線し、気がつけば関東と関西の文化の違いを語る語り場に。対象は同じでも、アプローチが僅かに異なる2つの文化圏。その差は小さくとも、歴史を背負った埋めがたい溝がある。ロンドンと関西、遥か遠くにあるのは果たしてどちらだろうか。そんなことを考えながら、あっという間に京都の一日は終わった。