ハンガリー2日目。昨日の夜から引き続き雨。すっかり観光する気が失せたが、朝食を食べに近くのカフェへ。頼んだのは目玉焼きの朝食セット。黙々と食べていたら店員においしいかと聞かれた。何故、目玉焼き程度で感想を求めるのかと思いつつ、僕は天使のような笑顔でおいしいと答えた。
雨は止む気配がない。僕は諦めて、近くのTESCOでビールとポテトチップスを買った。俗に言うひとり宴会セット。ハンガリーという異国の地で、昼間から酒を飲んでネットをするという無駄の極み。雨が許す至福のひと時でもある。
午後になり、雨がようやく少し弱くなったので目の前にあるシナゴーグに行くことにした。入り口そばには礼拝堂があり、そこは他国のシナゴーグを圧倒する広さ。装飾は格調高く、人が少ないのも相まって荘厳な雰囲気に満ちていた。調べてみたら、ドハーニ街シナゴーグというヨーロッパ最大のシナゴーグらしい。外には柳のようなオブジェがあり、葉にホロコーストの犠牲者の名前が刻まれていた。ハンガリーからアウシュヴィッツに送られたユダヤ人も多くいるし、ユダヤ人の不幸はドイツ一国の問題ではないことを痛感。
シナゴーグを出たら、次の国へのチケットを買っていないことに気付いた。旅は慣れるにしたがい手配が杜撰になる。雨が弱まってきたので、僕は歩いてブダペスト東駅へ向かうことにした。ところで、ブダペストには歩道橋の代わりに地下道がいくつもある。そこには寒さから逃げてきたホームレスがたくさんいて、まるで避難所の様相を呈している。中には若い女の人もいて、気の毒というほかない。僕は昨日の寄付金が少しでも足しになることを切に願った。
次の国はセルビア。理由は特にない。正直に言うと、治安に不安があるので気持ちは半々なのだが、ここまできたら毒食らわば皿まで。さて、駅に着いてカウンターでチケットの詳細を聞いたら、個室はないとのこと。4人用のコンパートメントが一番ハイクラスらしい。南に行くに従ってネガティブな情報が増えるので個室がよかったが仕方ない。僕は4人用のコンパートメントのチケットを買った。驚いたことに、チケット代はたったの3,000円程度。安すぎて逆に恐ろしい。
チケットを買って帰る頃にはもう夜。お腹が減ったので、通りがかった小さな立ち食いのピザ屋へ入ってみた。味はともかく、1切れ100円程度なので十分満足。ただ、店員のお姉さんは目が虚ろで、冷めたピザよりも生気がなかった。ハンガリーにおける労働と疎外。当然、ピザ1切れで満腹になるはずもないので、次はホテル近くで見つけたトルコ料理屋へ。が、注文したら店員にあれもないこれもないと言われて愕然。結局、残っている中でまともそうな肉料理を注文した。注文した品がない料理店。味は良かった。