シルクロード / Silkroad Part.8 (ウルムチ)

街並み [by D5100]
看板 [by D5100]
犬 [by D5100]

ウルムチへの出発は夕方なので、昼までホテルで休憩。というより朝から停電していたので、休憩以外に何も出来なかった。一部のアジアでは、やはりこの種のインフラのトラブルが常について回る。日本のインフラの偉大さを認識するのはこういう時。

チェックアウトの時間になり、僕はボストンバッグを抱えてロビーに下りた。すると、受付には初日に筆談したお姉さん。嫌でも記憶に残るチェックインをしたので、目が合うと秘密を共有する恋仲の男女のような照れ笑い。お姉さんから「1,000日元」を返してもらうと、僕は敦煌の旅の終わりを実感した。薄暗い無人のロビーを見渡すと、3日間の様々な思い出が溶けて混ざり合い、全身の血管を流れていくような感じがした。

敦煌最後の食事は、ラー油たっぷりの羊の内臓の炒め物。 最後にして敦煌一の激辛料理に出会ってしまった。昨日の羊の米麺と違って、こちらは濃厚かつ激辛なのでパンが全然足りない。どうにか頑張って全部食べ切ったら、額には汗がじっとり滲んでいた。おいしいにはおいしいが、感想を聞かれたら辛い以外の言葉が出ない。


ウルムチの道路 [by iPhone5]
店の看板 [by iPhone5]
店の看板 [by iPhone5]

ウルムチに着いたのは午後6時。当然まだ日は暮れていない。入国審査を終えて空港の出口に向かうと、つば無し帽を被ったイスラム系の人が多いことに気づいた。ウルムチは中央アジアと言ってもいい場所なので、イスラム文化が浸透している。果たして彼らはこの辺りに住む少数民族のウイグル人なのだろうか。肌で感じる異文化に興奮を隠し切れない。

さて、僕がまずやらなければならないのはホテルの住所の確認。インフォメーションセンターを見つけて、受付の女性に「Altai Road」の中国語を聞いた。何故なら、バスにしろタクシーにしろ英語表記ではほとんど理解してくれないからだ。全然期待していなかったのだが、彼女は僕の意図を理解してくれ「阿勒泰路」と書くだけでなく、ホテルの名前まで中国名で書いてくれた。ありがたい。僕は紙を受け取って、彼女の指示するシャトルバスに乗り込んだ。運転手は僕を外国人と知ってか、住所の紙を奪い取ってわざわざホテルの真向かいで下ろしてくれた。何て気の利く人たちなのだろう。初日にしてウルムチの高感度メーターが振り切る寸前。

バスを降りてまず思ったのが、意外にウルムチは都会だということ。広い道路にかかる歩道橋から遠くを見ると、高層マンションが連なっていた。そして驚いたのは、中国語の上に書かれたアラビア語とロシア語。ここまで西に来ると、中国といえどもロシア人やアラブ人が多いのだろうとひとり納得。あとで事情通の友人に看板の写真を見せたら、これはどちらもウイグル語の表記だと教えてくれた。


泊まるホテル [by iPhone5]
イヌ [by iPhone5]

3日間お世話になるのはSuper 8 Hotelという中国国内でチェーン展開しているホテル。ホテルに入る時に、かわいい野良犬にしっぽを振って歓迎された。受付では、英語を話せるスタッフがいて何の問題もなくチェックイン。ウルムチでは怖いくらい万事がうまく行っている。部屋はかつてないきれいさで、僕は小躍りして思わずベッドにダイブ。ウルムチでの快適な滞在の予感に顔がほころぶ。


看板 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]
市場 [by D5100]

SNSで近況報告を済ませ、日が暮れる前に夕飯を求めて街に繰り出すことにした。ホテルの反対側に出ると、香港や台湾で見られる中国語の看板地獄が見えた。飲食店は皆無で、工具や機械の部品を扱っている店ばかり。ボルトナットを夕飯にするわけにはいかないので、僕はもう少し歩いてみることに。すると、すぐ隣の通りに露店のマーケットが出ていた。

このマーケットで扱っていたのはほとんどが生鮮食品。飲食店は少なかったが、その中で牛肉のミートパイと謎の粉物ジャンクフードを買ってみた。牛肉のミートパイは、少し油が多かったものの想像範囲内の味。謎の粉物は、生地にソーセージ乗せてネギと香草を入れた焼いたお好み焼きのようなもので、味付けを5つの中から選べる仕組み。辛さにうんざりしていた僕は一番マイルドそうな「酸甜(甜は甘いの意味)」を注文。ところが、いざ食べてみるとこれが舌が焼けるような辛さ。日本だったらまず事前に警告が入るレベル。何故、中央アジアの人々はこうも辛いものを好むのか。一応全部食べ切ったがもう食べたくない。


食堂 [by iPhone5]

買い食いをしていたら日が暮れ始め、みるみるうちにウルムチは闇に包まれていった。工具を扱う古びた店が多いため、暗くなると途端にアンダーグラウンドな雰囲気が漂い始める。僕は既にある程度お腹が満たされているにも関わらず、しぶとく夕飯探しの旅を続けることにした。

観光客オーラ全開で色々歩いてみた結果、食堂は空港から来た大通り沿いに密集していることが分かり、比較的清潔なところを選んで入ってみた。その店は定番の牛肉麺のお店で、店員の中年女性は外国人の僕に物珍しそうな笑顔を浮かべていた。注文した牛肉麺は量がとても多く、小サイズを頼めばよかったと軽く後悔。ただスープは清湯を選んだので辛さは皆無。胃と心が落ち着く味に、ほっとため息が出た。ちなみにどうでもいい話だが、ウイグルの人は日本人のように麺を大胆にすすっていた。

部屋に戻って、ネットでウイグル関係の情報を色々調べた。そして、日付も変わり眠くなってきたので、シャワーを浴びにバスルームへ。すると、今までどのホテルにもなかったカミソリを発見して狂喜乱舞。実は今回、かさばるので電動のシェーバーは持ってこなかったのだ。そろそろ薄汚れた犯罪者の顔つきになるところだったので、このサービスには救われた。髭をすっかりそり落としたら、洗面台はまるで小さな砂場。磁石があれば少しは砂鉄がくっついただろう。シルクロードには、夢とロマンと髭を伸ばす何かがある。

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