先週末、写真を撮りに友人と浦賀に行った。浦賀といえばペリー来航。当時の人々は大きな黒船の群れにさぞ度肝を抜かしたことだろう。今で言うと、火星人が地球に不時着したような感覚だろうか。いずれにせよ、ペリーの来航が日本を動かすきっかけになったことは確かで、浦賀は日本現代史にとって重要な土地。残念だったのは、散々「ペリー=浦賀」の意識を植えつけておいて、資料館の類は久里浜にあるというフェイント。僕たちはペリーの痕跡の代わりに、海に浮かぶたくさんの子供たちを見た。
浦賀には観音崎灯台という灯台がある。海に入らず海岸にいるのも癪なので、200円を払って登ってみた。灯台内の螺旋状の階段の壁には全国の灯台の写真。世の中にはきっと灯台マニアというものが存在するのだろう。趣味の世界は奥が深い。さて、灯台を登りきって外に出ると、強風と広々した海が僕たちを歓迎してくれた。眺めは素晴らしいし、この灯台の放った光が数知れぬ船に安堵を与えたと考えると、そこに立つ自分が救世主になったような気分になる。
この日のもうひとつの目的は、横須賀美術館で開催中の「日本の「妖怪」を追え!展」。妖怪といえば水木しげるだが、この展覧会ではそういった典型的な妖怪よりも、社会批判を含むような異形の人間を表現する現代美術が多かった。中でも目を引いたのは、胎児(というより奇形児)のようなオブジェばかりを作る鎌田紀子という人の作品群。人間のようで人間たり得ない奇妙な造形物には、グロテスクさと同時に不思議な親近感があった。思えば僕たちは皆かつて胎児だった。
妖怪展を見た後は、地元のこじんまりした定食屋で夕食。海沿いだけあって刺身が抜群においしかった。僕たちはアジとタコの刺身とアナゴの天ぷらを存分に堪能した。特に身がしまって全く臭みのない地物のアジは絶品。ちなみに、ペリー来航時、幕府はペリー使節団に刺し身を振舞ったのに、彼らは手を付けなかったらしい。もったいない。その160年後、アメリカにたくさんの寿司屋ができたことをペリー提督に報告したい。