夏といえば花火。花火といえば隅田川。ということで、2年振りに隅田川花火大会に参戦した。一応企画者なので午後1時過ぎから場所取り。シートの上で1時間ほど心頭滅却して座禅を組んでいると、友人が2名ほど先乗りしてきてくれた。雨の予報が嘘のような炎天下の中、僕たちはコンビニで酒を買って乾杯。花火は場所取りの時間が意外と楽しい。
5時を過ぎて日が陰りだすと、隅田川沿いはどこからともなく湧き出てきた人々で溢れだした。僕は人ごみを掻き分け、友人を迎えに駅前に向かった。花火大会の日は6時以降次々と道が封鎖されるので、迎えに行くだけでも一苦労。全員無事に集合した後は、買ったピザを囲んで乾杯。そして、1缶も飲み終わらないうちに最初の花火が打ち上がった。
不吉な予兆は花火が始まってすぐに現れた。日が落ちたばかりなのに不自然なほどの湿っぽい肌寒さ。そして間もなく悪魔の涙がぽつりぽつりと落ちてきた。この時点ではまだ何とかなると思った僕たちは、動かず傘とレインコートで花火を鑑賞。しかし、雨は5分もしないうちに容赦なく滝のように降り始めた。公園にいた全員は川沿いの高架下に避難。そして止まない雨音と喧騒の中、花火中止の報が淡々と流れた。
雨ざらしになったビニールシートはまるで略奪の跡。6時間の場所取りの手間と花火職人が作った大量の花火は豪雨に流されてしまった。残念だが天気の前に僕たちは無力。初めて花火を見に来たベトナムの友人に「今日のことは忘れられない」と笑顔で言われたのが救いだった。僕たちはレインコートを被ったまま隅田公園を後にし、上野の居酒屋でしめやかに乾杯した。そして、他愛のない話で盛り上がってあっという間に終電の時間。終わりよければ全てよし。満員電車で揉まれながら、僕はこの素晴らしい言葉を何度か心で呟いた。