香港から帰国したら、日本はもう桜が散る季節になっていた。急な季節の移ろいに焦りを覚えた僕は、急遽花見を開催。伸るか反るか、散るか見るか。人集めが直前だったので、結局集まったのは日本人3名とベトナム人1名。場所は用賀の砧公園(きぬたこうえん)。
空は好意的に解釈するなら花ぐもり。昼過ぎにも関わらず、じっとしていると既に肌寒い。僕たちは駅周辺で買ったつまみを広げて、宴会を開始した。桜は思った以上に少なく、辺りに漂う寂しげな雰囲気。僕たちはそんな桜を慰めることなく、ただ食欲だけを満たしていった。
周りにはビニールシートの隙間を縫うように、何匹もの鳩が餌を求めてさまよっていた。鳩を見たベトナム出身の友人が「日本人はあんまり鳩に餌をあげない。ベトナムでは鳩は平和の意味だから鳩を見つけると餌をあげる」と言った。しかし、彼女いわくベトナムには鳩があまりいないらしい。何故なら、ベトナムでは鳩は平和の象徴であると同時に食材だから。大いなる矛盾は、決してルール違反ではない。今度ベトナムに行ったら鳩を食べよう。
日が落ちかけた頃、いよいよ寒さが厳しくなってきたので、2013年の花見はしめやかに終了。片付けの後は、公園を歩き回って桜の撮影会をした。が、そもそも桜というベタな題材をかっこよくカメラに収める方法が思いつかない。ぶつくさ言いながら、僕は儚い桜の命をフィルムに封じ込めた。全体的に地味な花見になってしまったが、これはこれで楽しかった。花見は桜を見ることでも仲間内で騒ぐことでもなく、開催することに意義がある。