最終日は再びバンコク経由で帰国。正午過ぎにルアンパバーンからバンコクへ移動した。そこから日本への飛行機は深夜発なので、半日ほど観光する時間があった。しかし、ラオスを満喫しつくした僕は既に燃え尽き症候群。バンコクへの到着が1時間も遅れたが、もはや他人事にしか感じなかった。
バンコク到着。何にせよ市内に出ないと始まらない。とりあえず買い物でもしようとChit Lomへ。このあたりは交通渋滞がひどく、自然豊かなラオスに慣れつつあった僕には衝撃的な光景。また所々にある国王、王妃の大きな広告が目を引いた。日本で天皇陛下の写真が街中に飾られることは絶対にないだろう。文化の違いをひしひしと感じた。
Chit Lomから少し歩いて、セントラルという巨大デパートに立ち寄った。噂ではこの辺りにCDショップがいくつかあるらしいのだが、ろくな店がなかった。やはりアジアで世界中の音楽が買えるのは日本だけ。ガラパゴス化する日本だが、音楽に関して言えば十分グローバルスタンダードに達している。
セントラルで食事を済ませた後は、SIAMまで歩きつつ露店を眺めた。自分用にタイパンツが欲しかったのだが、一軒一軒くまなく探してもない。タイパンツはタイのパンツではないのだろうか。タイパンツがタイのパンツではないとすると、どこの国のパンツなのだろうか。タイパンツがタイ以外のパンツだとすると、タイパンツがタイパンツと名付けられた理由は一体何だろうか。謎が謎を呼んでも、無いものは無い。もしかするとタイパンツは完全に外国人向けの商品で、タイの人は身に着けないのかもしれない。日本に侍と忍者がいないのと同じ理屈。
SIAMの一角のラーチャダムリ交差点に人だかりが出来ていた。見ると金色の派手派手しい像があり、人々がこぞってお祈りを捧げていた。驚くべきは今時の若い人も祈っている点。タイの人の信仰心には目を見張るものがある。日本ではこんな光景は考えられないと思ったが、よくよく考えると節目節目で日本人はお参りをしている。
結果としてバンコク滞在は、デパートで夕食を取っただけで終了。不毛の6時間。僕は9時過ぎに空港に戻って、お土産に恒例のドライフルーツを買った。帰りは機内泊なので、搭乗口に近付くにつれテンションが下がる。しかも実際に飛行機に乗ったら、席は中年に挟まれた真ん中。僕は眠くなるまでひたすら数独をやって目を閉じた。一応時間的にはそれなりに寝たものの、全く疲れが取れない。
2週間ぶりに日本へ帰国。ああ美しき我が故郷と感嘆するほどではないが、やはり日本は総じて清潔。アナウンスの日本語を聞くと、海外で知らず知らずに凝り固まった身体がほぐされていく。成田エクスプレスの窓の外には、ゆっくり過ぎ去るのどかな田園風景。僕はその景色をぼうっと眺めながら、家に着いたら何を食べようかと思案し、うとうと夢見心地になっていった。