初韓国でチムタクを食べる



初めての ソウル に降り立った。今回は一応仕事も兼ねているので、男5人での集団行動。自由行動ゼロの修学旅行スタイルとも言える。
仁川国際空港から市内までは想像以上に距離がある。市内に着くころには、時計はすでに22時近くを指していた。
宿のある明洞周辺は完全な繁華街で、看板のハングルを除けば街並みはほぼ歌舞伎町。客引きの多さまで含めて、妙な既視感がある。
遅い夕飯は チムタク という大皿の鶏の煮物だった。日本ではあまりメジャーではないが、甘辛い鶏肉の味付けと春雨の組み合わせが妙にクセになる。
食べ進めるうちに辛さがじわじわと蓄積していくのが韓国流らしい。しかし、おいしいので箸が止まらず、結果は腹十二分目という幸せな惨状となった。
会計時、店主が突然「ギンギラギンにさりげなく」を熱唱し始めた。真意は分からなかったが、味も量もサービスも文句なしで、大満足の初韓国ディナーとなった。
ソウルの夜は終わらない


夜中の容赦ない寒風にさらされながら、帰り道にとあるバーへ立ち寄った。体は冷えているのに、なぜか食欲だけは衰えを知らない。
さっきまで散々食べたにも関わらず、ここからが本番とばかりに怒涛の注文。韓国の割きイカはもちもちした食感で、日本のそれより格段に食べやすかった。
初日の深夜からアクセル全開の食い倒れモードに突入し、僕の胃は破裂寸前。血液が胃に集中し過ぎたせいか、ホテルに着いたら気絶するようにすぐに寝てしまった。
日本大使館前の従軍慰安婦像


翌日、昼食をとるため外に出ると、日本国大使館の前に、噂の 従軍慰安婦像 があった。ニット帽やマフラーを身に付けていて寒さ対策は万全そう。
事の真偽や善悪はひとまず脇に置くとして、どうにも腑に落ちない点があった。日本大使館の正面に置かれているにも関わらず、日本語の表記が一切見当たらないのだ。
本気で日本人の行いを糾弾したいのであれば、当然、日本語も併記すべきだろう。察するに、これは抗議というより、抗議の形を借りた政治的な表現方法なのだろう。
ランチは本場のサムゲタン



韓国料理といえば、やはり サムゲタン(蔘鷄湯)。本場のものは朝鮮人参の香りが強く、好き嫌いが分かれると聞いていた。
だが、実際に食べてみると個人的にはまったく問題なし。むしろ、体に染み渡る感じがして滋養強壮になりそう。
また、付け合わせのキムチはシャキシャキしたカクテキが特においしかった。しかし、調子に乗ってにんにくのキムチにも手を出したら臭いがすごいことに…。
考えてみれば、韓国料理はにんにくを遠慮なく使う文化。結果として、常時にんにくの臭いが自分について回る。
曹渓寺と空気を読まない参拝者







にんにくの臭いに包まれたまま、ホテルに戻る前に近くのお寺へ立ち寄った。門からして色鮮やかで、建物もやたらと貫禄がある。これはどう見ても、ただのお寺ではない雰囲気だ。
あとで調べてみると、ここは 曹渓寺 という名前だった。韓国仏教最大宗派である曹渓宗の総本山で、ソウル中心部にありながら信仰と修行の拠点になっている寺らしい。
なるほど参拝客も多く、観光地というより現役のスピリチュアル空間といった感じだった。そんな場所で、空気を読まずに写真を撮りまくる日本人がひとり…。
ホテルにて通り雪に震える

やり残しの仕事があったので、みんなと別れてひとりホテルへ戻った。それが一段落ついたところで、さて観光でもと思い窓の外を見たら、まさかの雪が降っていた。
止んだかと思えば、しばらくしてまた激しく降り出す。ソウルの天気は、想像以上にじゃじゃ馬らしい。
これは通り雨ならぬ通り雪だと信じたい。
──あと2日、果たして凍死せずに過ごし切れるのだろうか。
暖かいホテルの一室で、凍てつく不安だけが静かに脳裏をかすめた。
(続く)