香港からの帰国ついでに、中国の成都に1泊。成都といえば、三国時代の蜀の首都。劉備が逃げに逃げてたどり着いたいわば僻地なので、北京とはまた違った一面が見れるだろう。期待が膨らむ。
成都空港は国際線の到着口が驚きの狭さ。例えるなら小学校の体育館といったところ。空港を出ると、早速四方八方から怒号が聞こえてきた。もちろん彼らは怒っているわけではない。周囲の声にかき消されまいと自然と声が大きくなっているだけ。周りの人々はいたって涼しい顔をしていた。
国内旅行者でごった返す中、タクシー乗り場を探していると若い女性に200元でホテルまでどうかと誘われた。高いと思いつつも、ホテルの場所を知っているようなので値段交渉して120元で乗車。あとで調べたら相場は60元。運転手のお兄ちゃんは上客の僕にタバコを勧めてくれた。もちろんタバコは吸わないので丁重に断った。
香港からさほど離れていないのに成都は寒い。気温5度。乗用車はどれも砂ぼこりに塗れていて、お世辞にもきれいとは言えなかった。そして、窓越しに見える建物はどれも古びてくすんでいた。閑散とした正月ムードとあいまって、街はさながら廃墟のような雰囲気。俄然気持ちが高ぶってきた。
泊まったのはネットで5つ星だった岷山飯店(約7,000円)。お互い片言英語でのチェックインがたまらない。部屋までボーイが何か説明をしながら荷物を運んでくれたのだが、中国語のため絶望的に理解できなかった。しかし、部屋のキーカードがうまく入らず、何回か試してうまく行った時には「Oh…Yeeees….」と吐息交じりの英語で褒めてくれた。さすが五つ星。
ホテルを出たのは午後3時過ぎ。時間がない上に天気もよくないので、冒険せずに近場を散策(旧正月の成都にいること自体が既に冒険だが)。成都はとにかく街の区画が広い。大通りには大学や高級ブランドが立ち並んでいた。普段はきっと多くの人で賑わっているのだろう。そう考えたい。
10分ほど歩くと、タクシーで通り過ぎた天府広場に到着。このだだっ広い敷地は家族連れで賑わっていたが、特に何のイベントも行われていなかった。
広場の向かいに毛沢東像を発見。これみよがしにそびえる独裁者の石像は、社会主義国家の醍醐味。中国の人も写真を撮っていて、なんとも不思議な気分になった。各世代の中国人の毛沢東観を聞いてみたい。
毛沢東像を間近で見たい衝動を抑えられなくなった僕は、向かいに渡るために信号を少し早めに渡ろうとした。すると、それを見逃さなかった交通整理のおばさんに大声で注意された。まさかこの平凡な人生で四川省のおばさんに注意を受けることになるとは。人生、何が起こるかわからない。
(続く)