香港帰りに北京で一泊

香港出張が終わり、帰路は 北京 で1泊することに。空港へ向かうタクシーの中では、恒例の 運転手との片言英語コミュニケーション地獄。
もう開き直って沈黙を守るべきなのだろうが、妙な義務感でつい話してしまう。私は貝になりたい。
北京には約4時間で到着。2度目ともなると、初回のような興奮や高揚感はどこにもない。経験を積むごとに、純粋だった心は少しずつ麻痺して、僕はどんどんつまらない人間になっていく。
早速、青信号に裏切られる


北京では、日本へ出張する香港人の同僚と落ち合う予定だった。待ち合わせまでまだ時間があったので、ふらりと2号線の雍和宮駅で下車してみることにした。
地上に出た瞬間、線香を売る煤けた人々が一斉に群がってくる。この手の光景は、だいたい観光スポットの存在を示すサインだ。
そう思ってワクワクしながら横断歩道を渡ったところ──青信号にもかかわらず車に轢かれかけた。どれだけ旅に慣れても、中国は油断できない。
雍和宮を目指して迷子になる





駅名でもある 雍和宮 を目指して歩いていたのだが、どこかで道を踏み外したらしい。気づけば到着したのは、雍和宮ではなく儒教系の施設。周囲には中国人の団体ツアー客がわらわらいた。
ここはもしや孔子廟かと思ったのものの、よく見ると清代の墓石のようなものが立っていた。そして、左手を見ると 辟雍(へきよう)なる建物があり、正体はさっぱり分からない。
結果として分かったのはひとつ。僕には史跡を見分ける能力が皆無 ということだった。
雍和宮で芽生えかけた信仰心の行方




地図を頼りに来た道を引き返し、今度こそ本物の雍和宮へ到着。奥へ進むとお焼香エリアがあり、人びとが平身低頭で熱心に祈りを捧げていた。
不信心な僕には、何をそんなに願うことがあるのか正直よく分からない。だが、この真剣さには心を動かされるものがある。
雍和宮のおかげでちょうどいい時間潰しになり、コーラを片手に駅へ戻ることにした。すると道端で、突っ伏した物乞いの老女 を発見。
信仰に心を開きかけた善人モードの僕は、5元(≒70円)を皿に置いた。ところが近づいて分かったのは
──彼女はただ熟睡していただけだった。
信仰心の芽生えは、一瞬にして消え去った。
方向音痴、国境を超える


同僚と合流するため、ホテルへ向かうことにした。以前泊まった場所の近くだったので、調子に乗って少し離れた建国門駅から歩いてみたのが運の尽き。案の定、見事に迷子となった。
メモした住所を片手に、警備員や通行人へ片っ端から見せて質問攻め。しかし、返ってくるのは首をかしげる仕草ばかり。そう、ここは香港とは違って英語がほぼ通じない。
最後は交番に駆け込み、お巡りさんにジェスチャーで教えてもらって無事解決した。呪うべきは国境を越えた方向音痴。
北京にて、心より恥じる


無事に香港人の同僚とホテルで再会。とりあえず部屋に入ってテレビをつけようとしたが、リモコンはうんともすんとも言わない。
仕方なくスタッフを呼んだところ、そもそも入口のカードホルダーにキーを挿していなかった。心より恥じる。
一服した後は、夕飯を食べに 王府井(Wang Fu Jing)へ行くことに。最寄りは永安里駅のはずだが、地図とにらめっこしても駅の入口がどこにも見当たらない。
同僚が近くの人に聞いてくれたら、なんとホテル横のビルの中に入口があった。心より恥じる(本日2回目)。
王府井に見る北京グルメの罠


王府井に着くと、屋台街は押し返されるほどの人の波。とりあえず羊肉串を頬ばりつつ通りを散策していると、前方からやけにテンションの高い声が聞こえてきた。
近づいてみるとスペイン語をしゃべるラテン系の若者たちが、サソリの串(しかも生)を超ハイテンションで食べていた。店の女性は苦笑い。
ラテン系の人たちには、僕たちアジア人とは根本的に違う世界が見えている。
屋台でひと通りつまんだあと、まともな夕食を求めて屋台街の外れにあるお店へ入った。写真ではとてもおいしそうだったのに、出てきた麺はぶよぶよで味がほどんどしない。
食の都ならぬ食の砂漠、北京。中国では完食が礼儀ではないと聞いていたので、遠慮なく全皿を残した。
吉野家で果たした雪辱戦

屋台街での夕飯に盛大に裏切られた僕たちは、駅前のグルメストリートで雪辱戦を挑むことにした。そこで目についたのが、見慣れたオレンジ色のロゴ。つまり吉野家。
しかしメニューを見てみると、日本とまったく違うラインナップがずらり。興味本位でノーマル牛丼を頼んでみたら、味は日本の吉野家と完全に一緒だった。
ちなみに汁だくを頼んだら、店員は首をかしげながら、汁だけ別容器に入れて提供 してくれた。恐らくこの注文の仕方は中国に伝わっていないのだろう。
食後はホテルに戻り、NHKを見ながらまったり。頃合いを見て前回訪れたマッサージに行くつもりだったのだが、気づけば深い眠りの中。目が覚めたのは朝4時…。
結果、マッサージ代として確保していた300元(≒3,500円)以上が丸々手元に残ることに。これは 北京がまた僕を呼んでいる と考え、換金しないことに決めた。