雨粒に閉ざされた新島行き


週末、友人と向かったのは 新島。
竹芝桟橋からジェット船に乗り込むと、頭上には重たい曇り空が広がっていた。船窓から見えるのは、横切っていく船やコンテナを積んだ貨物船ばかり。
やがて窓は激しい雨粒に叩きつけられ、外界は一気にぼやけた灰色に閉ざされた。せっかくの船旅は、早々に幸先の悪い鬱々モードに突入。
雨上がりの新島、衝撃のお出迎え

3時間の船旅を経て、新島に上陸した。奇跡的に現地は雨知らずで、雨を押さえてくれている分厚い雲に感謝したい気分。
港で宿の送迎車を待っていると、現れたのはスキンヘッドに刺青の入ったお兄さん。車に乗り込むや否や、「レゲエは好きなの?」を執拗に何度も確認してくる。新島、やばいかもしれない。
間違われ放題のWAX


民宿に荷物を置くと、早速海辺へ直行。そこには透明感たっぷりの海と、どこか物憂げな曇り空が広がっていた。
今回の旅の楽しみのひとつ、音楽フェス「WAX」もすぐ近くで開催される。ところが、会場に足を踏み入れるとガラガラだった。
そして、人が少なすぎて、関係者と間違えられるハプニングが多発。海風に混じって流れるのは、淡々としたアシッドテクノだった。
曇り空の海辺散歩



アシッドな音に背中を押されながら、会場周辺の海辺をぶらぶら。砂は粒が大きく、サンダルの隙間に入り込むたびに足つぼマットのように痛む。
それでも、曇り空と海の組み合わせは意外と悪くない。立ち止まって海を眺めていると、その波音がまるで全身をそっと撫でてくれるようだった。
テレビが映らない夜



この辺りのスーパーは夜7時で閉店するため、夕方には買い出しへ。酒とつまみをしっかり仕込み、民宿で夕食をいただいた(写真右の中央には、いなだの刺身がくる)。
食後はテレビを見ながらまったりのはずが、食堂のテレビは横線しか映らない。民宿っぽい出来事で、これもまた一興。
ちなみに、僕たちの部屋のテレビは砂嵐しか映らない。これで二興。つまり、部屋にいてもやることがない。テレビを捨て、街へ出よう。
東京砂漠と砂風呂の夜

部屋で一息ついた後、砂風呂が名物の まました温泉 へ向かうことにした。
小雨が降る通りには人影も車もなく、まるで島ごと貸し切っている気分。勝手にブレーキがかかるレンタル自転車で、僕たちは島をそれなりに颯爽と走り抜けた。
30分後に温泉到着。砂風呂は浴衣のまま入り、熱を帯びた砂をどんどんかけられる。
室内には往年の名曲・東京砂漠がしめやかに流れていた。砂は想像以上に重く、わずか15分で滝のような汗が吹き出でる。これは確かに、健康にもデトックスにもいいかもしれない。
闇夜の砂浜、WAX再訪



いい汗を流した後は、再びWAXの会場へ戻る。夕方より人が増え、派手さはないが確実に熱量が高まっていた。
それでも、なぜかまた知らない人に関係者扱いされるのはお約束。僕たちはそのまま真っ暗な砂浜をバックに、しばし音楽に身を委ねた。
新島・奇縁と醜態の夜



気分の高まった帰り道、ふと目に入った居酒屋「日本橋」に吸い込まれた。くさやを肴に麦焼酎の嶋自慢をちびちびやっていると、いつの間にか隣席の若い男女と会話が始まった。
話すうち、その中のひとりと大学も地元も同じだということが判明。さらに、カウンターの強面のおじさんまで同郷という偶然に偶然が重なった。なんという奇縁。
途中、そのおじさんが「どうしても困った時はオレに連絡しろ」と名刺を渡してくれた。僕は平身低頭で恐縮したが、怪しいことこの上なし。
やがて若者たちとの宴は大学の 新歓コンパさながらの乱痴気騒ぎに発展 し、店には大迷惑をかけて終了。
日付が変わって民宿へ戻り、泥酔のまま友人と反省会を始めた。現代の若者の体たらく、つまるところ新島とは何かという議論をしながら、気づけば2人とも静かな寝息を立てていた。