都会のざわめきが恋しくて

やっと辿り着いた最終目的地、札幌。駅前に出た瞬間、目に飛び込んできたのはビルの群れと人の波。空の広さよりも整然としたビルの群れにホッとする自分がいる。
長万部の静けさも悪くなかったが、やっぱり僕にはこの人工的な喧騒が心地いいBGMらしい。旅の終わりにして、ようやく日常へ戻ってきた気がした。
札幌時計台、期待とのズレ

札幌は格子状になっていて道が分かりやすい。ホテルに行く前に、僕は時計台を目指すことにした。時計台は北海道によくある西洋式の建築物。実際に見ると何が魅力なのかいまひとつ理解できない。
札幌の街は碁盤の目のように整っていて、方向音痴の僕でも迷わない。ホテルに行く前に、観光の定番である 時計台 を見に行くことにした。
白い外壁に赤い屋根、まるで絵本から抜け出したような建物。だが正直、実際に見ると何が魅力なのかいまひとつ理解できない。
大通公園でひとり読書


時計台を通り過ぎて南へ歩くと、細長い公園が姿を現した。その名も 大通公園。正直、もう少しひねりのある名前でもよかった気がする。
それでもここは、緑と噴水の調和が絶妙で心地よい。ベンチに腰を下ろして一服しながら、意味もなく本を開いた。が、シャツ1枚では寒すぎて5分も読めない。
やきそば弁当の哲学

宿泊先は安定のアパホテル。清潔で便利だが、相変わらず部屋は ミニマリズムの極致 だ。そんな空間でコンビニで買った北海道名物の「やきそば弁当」を開封。
この焼きそばの特徴は、麺を戻したお湯を捨てずに スープに再利用すること。合理的ではあるが、湯気の向こうに漂うのはエコよりも侘しさ。旅の終わりにして、妙に人生を考えさせる一杯だった。
すすきの、真昼の孤独劇場



流浪の北海道旅もいよいよ最終日。札幌の街をあてもなく歩き、最後の風を感じていた。行き着いたのは、大人の歓楽街 すすきの。昼間でもどこか妖しい熱気が漂っている。
その時、目に入ったのは 真昼間からソープへ消えていく初老の男性。もちろん、仕事でも観光でもないだろう。華やかな街の片隅で、人生の寂しさが滲む。
北の大地、また会う日まで








こうして歩けるだけ歩いて、北海道ひとり旅は幕を閉じた。振り返れば、涼しい風と海の幸の豊かさに何度も心を掴まれた数日間だった。
曇った空も多かったが、それもまた北海道らしい。中途半端な天気さえ愛おしく思えるほど、旅の充実度は満点。
いつか本当に、ここに住むのも悪くない──そんな予感を残して、僕は再び日常へと帰っていった。