天安門へ灼熱の帰路


締めくくりにもう一度天安門広場を目指し、故宮の外側をぐるりと歩いて戻ることにした。午後の北京は日の照り返しが容赦ない。
そんな中、なぜか警官に笑顔で敬礼されるという謎の事件が発生。咄嗟に反応できず、結果的に完全にスルーしてしまった。ごめんなさい。
それにしても、北海公園から天安門までは想像以上の距離だった。炎天下で汗は止まらず、足は鉛のよう。最後の方は、水を求めてさまようゾンビのようにフラフラ歩いていたと思う。
天安門広場に響く記憶




汗だくになりながら、ようやく天安門広場にたどり着いた。まずは近くの売店で命の水を買って、一気に飲み干す。喉を潤すというより、もはや生き返る儀式。
しばらく日陰で体を冷ましたあと、いざ広場へ。入場にはまたもや荷物チェックが必要だった。国家の中枢だけあって、警備の厳しさも桁違いだ。
天安門広場は一見するとだだっ広い広場でしかない。しかし、現実にはここで自由への戦いが2度も潰えて、多くの人々の血が流れた。
過去へ思いを馳せると、感慨と共に歴史の重さがずしりと肩にのしかかってくる。ここには、まだ語られぬ記憶が眠っている。
沈まぬ太陽と長い一日

ようやくホテルに戻ったのは、朝から実に8時間ぶり。ドアを開けた瞬間、無料の水を一気に飲み干し、そのまま湯船に浸かって全身の疲れをほぐした。
日差しを浴びすぎたせいで、水に触れるだけでも皮膚がひりひりする。思えば、今日はとてつもなく密度の濃い一日だった。
だが、それでも旅は終わらない。何故なら夜はこれからなのだ。北京では夜8時にならないと日が沈まない。
中国4千年の味を求めて王府井へ

夕食は2駅先にある 王府井 へと繰り出した。目的は、小吃街と呼ばれるにぎやかな屋台街だ。
ここには中国4千年の歴史が詰まっていて、世界各国の旅人たちの胃袋を満たしてくれる。ひとり旅は食事に困るので、こういう場所は本当に助かる。
サソリ串の洗礼と味の迷宮






屋台街は人の波で溢れかえり、熱気と香辛料の香りに包まれていた。入口でまず目を引いたのは、生きたままのサソリが突き刺さった串。
その隣にはムカデ串やヒトデ串も並び、罰ゲームでも遠慮したいビジュアルのオンパレード。とはいえ見てまわる分には退屈しない。
いくつか挑戦してみた中で美味しかったのは、胃袋と香草を湯通しして味噌風のソースでいただく煮込み料理。日本の中華料理に慣れすぎたためだろうか、他は想像以上にピンとこない味だった…。
疲労と充実の等式

長かった一日の締めは、昨日のコンビニで手に入れたビールとレッドブル。何かをやり遂げたような達成感に包まれながら飲むビールは、いつもより数段おいしかった。
身体は限界寸前なのに、不思議と心は満たされている。そして、この疲労がむしろ充実感を与えてくれるという不思議。肉体と精神の奇妙な均衡に感謝しながら、明日に備えて早めにベッドに入った。